米10月雇用動態調査、過去10年で2番目の高水準 --- 安田 佐和子

アゴラ

米労働省が発表した米10月雇用動態調査(JOLT)の件数ベースでは、求人数が前月比3.2%増の483.4万人と、市場予想の479.5万人を上回った。2001年1月以来の高水準を達成した8月の485.3万人(483.5万人から下方修正)に次ぐ高水準となる。

新規採用人数は0.4%減の505.5万人となり、前月から小幅減少に転じた。リセッションが開始した2007年12月時点の500万人の大台を2ヵ月連続で突破している。離職者数は0.3%増の482.4万人と、2ヵ月連続で増加。定年や自己都合による退職者も272万人と、前月の274万人を下回った。


JOLTの求人率をみると、前月の3.2%から3.3%へ上昇した。民間が前月の3.5%から3.6%へ上向いている。民間のうち建設、製造業、貿易・輸送・公益、娯楽・宿泊などが前月から上昇した。専門・ビジネスサービス、教育などは前月と変わらず。政府は1.8%と、前月の2.1%から低下した。

就業者に対する新規採用率は、前月と同じく3.6%。民間は4.0%と前月の4.1%から低下した半面、政府機関は前月に続き1.4%だった。自発的および非自発的、あるいは引退などを含めた離職率は前月の3.4%を超え3.5%。民間は前月通り3.8%、政府も前月と変わらず1.4%だった。自発的離職率は1.9%と、2008年4月以来の高水準だった9月の2.0%以下に。2007年12月の2.1%到達がまたお預けになった。

10月までの過去1年間で、離職者数は5450万人だったものの採用人数は5720万人だった。ネット採用者数は、260万人増となる。求人1件当たりの競争倍率は1.9倍と前月の2.0倍を下回り、引き続き景気後退に突入した2007年12月の1.8倍に近づいた。

なお米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、改定値で24.3万人の増加した。

——以上、米10月雇用動態調査を受けたイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字を示します。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 3.3%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点) 2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.2%

3)自発的離職率—×
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.1%
現時点 2.0%

4)採用率—×
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時点 3.6%

5)非農業部門就労者数—○
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 16.2万人増
現時点の3ヵ月平均 27.8万人

6)失業率—×
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 5.8%

7)不完全失業率—×
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07平均 8.8%
現時点 11.4%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 30.7%

9)労働参加率—×
2014年9月(最悪時点) 62.7%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.8%

——雇用動態調査は、着実な労働市場の改善を表しています。前日に米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した米11月労働市場情勢指数(LMCI)も、2.9ポイント上昇。景気回復サイクルに入ってから上昇幅は311ポイントとなり、リセッション入りしてからの低下幅である367ポイントを84.7%埋めてきました。バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、同結果を受け「景気後退以前の水準を回復するまで1年もかからない見通しで、Fedの利上げ第1弾が2015年6月と予想する当方の見方と整合的」とまとめています。あとは賃金さえ持ち直せば、Fedにとっても労働者にとっても万々歳なのですが。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年12月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。