日経新聞の経済教室で、日銀の岩田副総裁が「レジーム転換が効果発揮」と書いています。レジーム転換ってよくわからないけど、彼は「2015年3月までに物価上昇率が2%にならないと辞任する」と約束しました。その物価上昇率はどうなったんでしょうか?
物価上昇率(消費税を除く・前年比%)出所:総務省
図のように、きょう発表された11月のコアCPI(生鮮食品をのぞく)の上昇率は0.7%と、10月より0.2%下がりました。この最大の原因は黒田総裁も認めたように原油価格が下がったことですが、その後さらに下がっているので、来年3月にはほぼゼロになるでしょう。
岩田さんはリフレ派の指導者で、これがアベノミクスの最大の売り物でした。リフレというのはインフレのことですが、「インフレを起こす」というとイメージが悪いので「物価安定目標」という変な名前をつけています。
その理論は「デフレになっているのはお金が少ないからで、日銀がお金をばらまけばインフレになる」というものです。よい子のみなさんにもわかるぐらい簡単ですね。なぜ日銀はそんな簡単なことをしなかったんでしょうか?
そんなことをしても効果がないからです。日銀は黒田総裁になってから、マネタリーベース(お金の量)を2倍近くに増やしましたが、上の図のようにインフレ率は下がってきました。
あまり上がらないというぐらいだったら言い訳もできますが、お金の量は激しく増えたのにインフレ率が下がったのでは、まったく理論としては成り立ちません。これを黒田総裁の好きなポパーのことばで反証されたといいます。
岩田さんは「レジーム転換」の証拠として、なぜかインフレ率ではなく失業率を出しています。これは図のように、2009年のリーマンショック直後をピークとして単調に下がっており、安倍首相の「大胆な金融緩和への言及」でも日銀の「量的・質的緩和」でも変化していません。
これは「不景気→失業率が上がる→賃金が下がる→雇用が増える」という普通の景気循環でリーマンショックの前にもどっただけで、日銀とは関係ありません。つまり「デフレ」とみえたのは、不景気で労働需要が減って賃金が下がっただけで、へらした雇用を非正社員で埋めれば、雇用は増えるが賃金は上がらない。これがいま起こっている賃上げなき景気回復の原因です。
そもそも岩田さんのリフレ理論によれば、「日銀がインフレにしないから景気がよくならない」ということでしたが、インフレ率が下がっているのに雇用は回復しました。いったいどうなってるんでしょうか?
どっちにしても、岩田さんの約束したように来年3月にインフレ率が2%にならないことは確実です。よい子のみなさんは岩田さんのように見苦しい言い訳をしないで、約束したことはちゃんと守りましょうね。