正月だから、たまには明るい話をしよう。「貿易立国」の幻想にとらわれたアベノミクスはこけたが、原油価格が下がって交易条件が改善したのは朗報だ。これを生かして、資本のグローバル化を進める必要がある。TPPも必要だが、その交渉が行き詰まっている原因は農業などのマージナルな話だ。それより重要なのは、直接投資の推進である。
直接投資というのは、企業買収・合併による長期的な投資である。GEPRでも紹介したように、日本の直接投資は極端に少なく、今もイギリスがトップである。大英帝国が世界を制覇した原因は、この海外投資だったのだ。
それでも海外に生産拠点を移す対外投資はGDPの15.2%あるが、対内投資(海外企業による国内企業の買収)は3.9%と主要国で最低だ。円安で日本の企業は世界から見て大幅に「お買い得」になったので、これを機会に海外資本によるM&Aを進めるべきだ。そのためには(法人減税の交換条件として)株式の持ち合いや買収防衛策を規制する必要がある。
政権は誤解しているが、法人税を減税しても投資は増えない。投資決定の目的関数は営業利益(税込み)だから、法人税が上がっても下がっても変わらない(変わるのは海外と比較した立地条件)。投資を増やすには、GDPの35%にのぼる企業貯蓄を減らす必要がある。
特に問題なのは、現預金が時価総額を上回る「100円の入った財布を70円で売っている企業」である。次の表の22位までは、金融資産/時価総額が100%を超えている。このように資本収益率が低いことが低成長の原因であり、銀行が融資しないで低金利の国債を買う原因だ。
こういう企業は買収して解散しただけで確実にもうかるので、企業買収の対象になるが、日本では低収益企業を保護するシステムが二重三重にできているので、資本市場が機能しない。それが資本収益率が低くなる原因だ。日本の企業はM&Aに消極的なので、KKRなどの海外ファンドを活用して資本効率を改善すれば、日本もまだまだ成長する余地がある。