北朝鮮の金正恩第1書記は1月8日、32歳の誕生日を迎えたが、国内では公式の祝賀会は開催されなかったもようだ。労働党機関紙など同国メデイアも最高指導者の誕生日に言及していない。興味深い点は、中国政府が祝賀のメッセージを送ったことを明らかにしたことだ。中朝両国関係が目下、良好からはほど遠い時だけに中国政府の金正恩氏誕生日祝電は平壌への関係改善へのシグナルか、と憶測されている。今年も祝賀会がなかった点について、「32歳の若い指導者は国民に謙虚な姿勢をアピールしたいのだろう」と、一般的に冷静に受け取られている。
当方は同日夕方、ウィーン市14区の北朝鮮大使館を覗いてみたが、ほとんどの部屋の明かりはなく、中庭の電灯も消えていたことから、大使館内では祝賀会はない、という確信を得た。ゲストが招かれたり、何らかの祝賀会が開催される予定ならば、中庭には電灯が灯り、部屋の明かりもついているはずだからだ。そのうえ、大使館正面入口横にある写真掲示板も既に閉じていた。公式の祝賀会はなくても大使館でゲストを招いて何らかのイベントが開かれていたら……と期待していたが、無駄足になった。
家に戻り、金正恩氏の誕生日のことを家人に話すと、家人は「へェー」という声を出して驚いた。独裁者と言えども、誕生日はある、何でそんなに驚くことがあるのだろうかと思っていると、家人は「8日はエルヴィス・プレスリーの誕生日よ。生きていたら今年80歳を迎えていたわ」というのだ。
家人が驚いたのは、キング・オブ・ロックンロール、プレスリーの誕生日と北朝鮮の金正恩氏の誕生日が同日だったことだ。当方は金正恩氏の誕生日は知っていたが、プレスリーの誕生日はまったく頭の中にはなかったので、家人と同じく、「へェー」と呟いてしまった。
いずれにしても、金正恩氏とあのプレスリーは同じ誕生日なのだ。星占いでは同じ星の下(やぎ座)になる。プレスリーは1935年米ミシシッピ州生まれで、77年8月16日、42歳の若さで亡くなった。正恩氏が1983年生まれた時にはプレスリーはいなかった。
ところで、金正恩氏は同じ誕生日のプレスリーの歌をどのように受け取っているだろうか。実兄の正哲氏(1981年9月25日生まれ)もスイス・インターナショナルスクールに留学しているが、その時、西側音楽に出会っている。その証拠に、正哲氏は2006年6月、欧州を訪問し、エリック・クラプトンのファンでコンサートを何度も訪れている。
とすれば、弟の正恩氏が同じ誕生日のプレスリーに関心がいかないはずがない。ひょっとしていたら、スイス留学中にプレスリーの歌、例えば、ヒット曲 Love Me Tender のレコードを買って部屋で密かに聴いていたかもしれない。なんといっても、プレスリーは10億枚のレコードを世界中で売った歌手だ。正恩氏がどこかでプレスリーのレコードを買っていても不思議ではないだろう。
蛇足だが、金正恩氏は新年の辞の中で、南北首脳会談開催へ意欲を示唆した。そこで当方は朴大統領にアドバイスしたい。「エルヴィス・プレスリー80歳」という新しいCDが出るから、正恩氏にプレゼントすれば首脳会談の成功は間違いないと思うのだが……。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年1月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。