台湾のねじれなどについて --- 宇佐美 典也

アゴラ

久々のブログ更新。

ざっと最近の活動報告ですが、相変わらずメガソーラー商売をやりつつ、JBpressさんに再エネ市場の改革の方向性日本の将来に関する地政学的考察に関する偉そうな記事を寄稿させていただく傍ら、嫁と台湾に行ったりなぜか「嵐にしやがれ」に出演したりしておりました。ということで今回は台湾と日本の関係についてあれこれと思うことをこの際まとめておきたいと思います。



(wikipediaより)

今回は高雄という南部の台湾第二の都市に3泊4日で行ってまいりまして、基本的には観光地と博物館と夜市とを回ってプラプラしつつ、週刊誌を買いあさってなんとなく眺めたり、高校生主催のコミケに参加したり、といった時間の使い方をしたのですが、感じたことを列記しておきます。

○とにかく空気が汚い。基本空気が澱んでいる。マスクは必須。スクーター文化が定着していて、一人一台スクーターを持っているのだが、このスクーターの排気が相当悪い。

○萌え文化が浸透していて駅ごと萌えに占拠されているところもある。ちなみに↓は台湾メトロのキャラクター。通りすがりに高校生の主催する同人会に行って「日本から来ました」といったらVIP待遇を受けた。

(http://japan.cna.com.tw/news/atra/201411270002.aspxより)

○タクシーや飲食店など労働集約型のサービス業の料金は日本の1/3程度。質は高い。特に飯は旨い。

○ファッションは日韓の影響が強く、芸能人などは台湾風と韓国風と日本風のメイク・ファッションに分かれている。一方雑誌はVIVIが人気なようだ。

○日本人の歌手だと安室奈美恵と浜崎あゆみをよく見た。AV女優は吉沢明穂と麻生希が人気なようだった。特に麻生希は台湾の人気女優と顔が似ているということで大人気らしい。現地の青年が麻生希への熱い思いを片言で語ってくれた。麻生希嬢↓が日台友好に果たしている役割は思いのほか大きいのかもしれません。

(http://blog.livedoor.jp/nozomi_asou/ より)

○中国との経済関係が年々強まっているのだけれど、中国人に警戒を抱いている、という複雑な心情を持っている。一方で日本については文化面で親和性を感じているものの、中国との兼ね合いから一定の距離を取るというこちらも複雑な心境にある。そんな中で若者に「台湾人は台湾人」というアイデンティティが強まってきているようだ。

○ちなみに戦前の日本の占領については一部保守層が言うように必ずしも「日本の植民地統治に感謝している」というわけではなく、日本統治時代の後に中国本省から来た国民党政府があまりにも酷かったので、「あー日本のほうがずっとましだったな~」というような印象を抱いているとのこと。これをかつては「犬(日本人)去りて豚(国民党員)来る」といったらしい。

○なおこの感情を象徴する事件に「2.28事件」というものがある。第二次大戦直後に日本統治を終わったことを喜んだ台湾人は相当数いたが、その後中国大陸からやってきた国民党員(「外省人」という)は略奪・強姦・賄賂を好き放題やらかすひどい有様だった。そのことに怒った日本統治時代から台湾に住む「本省人」が1947年2月28日からデモを繰り広げたところ、外省人が本土から軍隊を呼び寄せて28000人弱の本省人を殺害・処刑したというもの。白色テロの典型であり、今でも台湾人の心に深く刻み込まれている。

そんなわけで昨年国会を占拠した台湾の学生デモの背景には「文化的に日本に親近感を覚えつつも、経済的に中国に近づき、そのはざまで揺れて、台湾人としてのアイデンティティに目覚めつつある」という若者像があるように思えます。台湾の若年層の7割近くは台湾独立を支持しているといわれており、台湾は人口ピラミッドの形がまだ崩れていないため、10~20年後に世代交代が起きたときに台湾が本格的な独立を図る可能性は十分あります。

一方ですっかり若者からの支持を失った(しばしば支持率10%を割る)台湾の馬英九政権ですが、その根本的な主張は「3不(中国と統一しない、台湾として独立しない、武器を行使しない)」という現実的な先送り政策です。台湾が大陸からの独立を唱えると中国がギラつくので、この姿勢はアメリカにとっても中国にとっても台湾経済界にとってもそして日本にとっても受け入れられるまさに玉虫色の主張です。バランス感覚に優れた政治家ならこのスタンスを取るのも自然です。

しかしながら過去のチベットや新疆ウイグル地区の事例をみると、中国は先送りして十分な力をつけてから軍事に訴え係争地域を占領するという行動パターンを繰り返すので、若者の不安にも理由があります。台湾の置かれている環境は難しい。

日本としては台湾が中国に奪われる事態だけは回避しなければいけないので、当面の台湾の独立派の主張はけん制しつつも、軍事的な支援を通じて台湾が中国に対抗する力をつけることを支持するというアメリカのスタンスを側面から支援するような試みが重要となるように思えます。

一方で全然違う観点ですが台湾のスクーターによる大気汚染はひどいものがあるので、電動スクーターなんかの売込みは日本にとってビジネスチャンスになるのかもしれません。頑張れテラモーターズなどと思ったり。

以上当たり前のことしか書いてませんが、3泊程度ではこの程度のことしか感じられなかったとご容赦を。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2015年2月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。