今週の経済あれこれ

岡本 裕明

世界的な経済関係ではこの一週間、特段目立ったニュースがなく、メディア関係の人は記事探しに躍起になっていたのではないかと思います。日本のワイドショーはニュースが無くなると天気の話が多くなるのですが、これからは川崎の事件が数日は主役となり経済は二の次ですから逆に言えばそちらは視界良好という背景が見え隠れしています。

さて、そんな中でやはり注目したいのは日経平均の上昇ぶりでしょうか?19000円台が目の前に迫ってくるこの上昇ぶりに本来であればもっと盛り上がるはずなのですが、なぜかクールな感じがします。個人投資家好みの新興市場や東証第二部市場も良好でありますが、やはり、株式市場に参加している過半が50歳代から上の人である点において一部の人たちの恩恵にしか預かることができなのかもしれません。


上昇に拍車をかけているのが国家公務員の年金運用で国内株式比率を8%から25%に引き上げるとするなど国内株式市場へ流入する資金が継続していることであります。更に世界的に低金利、金融緩和でだぶつく資金が行き場を失いその運用の一部を日本に大きくシフトしているとみています。日本市場は欧州、北米市場とはまた違う特徴、つまり、政治的安定感と企業業績に裏付けされたファンダメンタルズの良さが安心感を誘っています。セーフヘイブンは日本円だけでなく日本の株式市場にもあるということでしょう。

このブログでメガバンクの株が動き始めたのでいよいよ市場は本格始動するということを書かせていただいたと思います。それを書いた後、三菱UFJの大幅上昇を始めあの国債と同じ程度の値動きでその安定感がたまらないと皮肉られたみずほフィナンシャルも遂に動意づきました。長期チャートを見れば一目同然ですが、メガバンクの利益水準に対して現在の株価は恐ろしく低くこれらの株が日本市場の大車輪となるべきであります。

さて、アメリカに目を転じましょう。木曜日に発表されたアメリカCPI (消費者物価指数)は前月比でマイナス0.7%、前年同月比でも2009年10月以来のマイナス0.1%となりました。但しコアは前年比1.6%増ですのでエネルギーの前年比マイナス18.0%が大きく響いているという事になります。

これをどうとるかはFRB議長のイエレン女史次第ですが、少なくとも今年前半の利上げはなさそうだという見方が強まっています。私は以前から今年の利上げにはかなり懐疑的で、あったとしても後半だろうとみていたのですがその公算は大いにあり得ます。一部専門家は今年は利上げがないとするところも出てきており、その読み合いとなりそうですが、FRBはその時々の経済情勢を見て判断するという方向に変わってきていますので予想は増々難しくなりそうです。間違いないのはFRBの目は雇用からインフレ率に移っているという事であります。

個人的には利上げ幅を0.25%というピッチではなく、その半分の0.125%とか0.1%といった歴史的ノッチにとらわれない慎重な動かし方もあるのではないかと思います。いずれにせよ、石油価格の落ち着きがアメリカ利上げタイミングを見る重要なポイントになりそうです。

その石油ですが、現在の50ドル程度(ニューヨーク WTI)で拮抗しています。アメリカの石油掘削のリグは既にほぼ1000箇所と昨年10月から4割も減っております。この傾向が更に続けばタイムラグを経てアメリカの石油産出量はサウジを凌駕できなくなり、サウジの怒りも収まるのではないかとみています。OPECの臨時総会開催のうわさもありますがサウジは否定しており、時間がたてば中東産石油に勝利をもたらすと見ているのでしょうか?

最後にあまり話題にならなくなったカナダですが、噂されていた3月の再利下げは中銀議長の講演からかなりネガティブなトーンと捉えられ、その可能性がかなり打ち消されています。ただ、カナダ経済が底打ちしたとは思えません。特にアルバータ州の住宅市場は取引件数で前年比半分程度まで落ち込みそうで石油や資源に頼るこの国の弱点が出てしまっているようです。

こうやって地球儀を俯瞰すると実体経済のマネーと緩和で浮遊するマネーの二種類が違う動きをしながら経済をドライブしていると言えそうです。ドイツの株式も堅調なのはユーロ圏の主役としてそのあたりの資金を一手に集めているユーロ圏のセーフヘイブンと言えましょう。今のところは市場的には日本、ドイツが有利な展開でそのあとをアメリカが追っています。経済的にはアメリカが独走し、日本とドイツが追っているピクチャーでしょうか?

春が近づいています。春風と共にこの流れに変化が出るのか注目していきたいところです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人  2月28日付より