地銀再編

岡本 裕明

香川銀行と徳島銀行を傘下に持つトモニホールディングスが大阪地盤で三菱UFJが25%の株を握る大正銀行を傘下に収めることが報じられています。三菱UFJはその結果、トモニの応分の株式を取得することになるようです。これは地銀再編の中でメガバンクが絡んだ案件として注目されています。


金融機関再編は金融庁の時代というより大蔵省の時代からの長年の懸案でありました。大蔵時代には都市銀行の再編が主力でありましたが今、メガバンク3行が飛躍の時代を迎え、りそなは6月の株主総会後に1200億円余りの最後の公的資金の返済を、あおぞら銀行も1600億円余りを同時期に返済し、残りは新生銀行だけになります。つまり、金融再編の足元は着実に固まってきているともいえ、金融庁が今後地銀、第二地銀、信金などの再編に手を付けるのは当然の動きでありましょう。

それを急がねばならないもう一つの理由としてはゆうちょ銀行が秋に上場することがあるのではないでしょうか?同行の預金残高はちょっと古いですが2012年で175兆円と三菱UFJの124兆円を圧倒的に凌駕します。支店においてもみずほ銀行以外ですべての都道府県に店があるのはゆうちょ銀行だけであります。その中で最も注意しなくてはいけないのはゆうちょ銀行の貸し出し業務ではないでしょうか?

「郵政民営化法により完全民営化までは貸付・手形割引業務を行うに当たり、内閣総理大臣と総務大臣の認可が必要となっており、郵便貯金を引き継いだ担保貸付以外の融資業務は事実上凍結された状態になっている」(ウィキ)でありますから今後、ゆうちょ銀行が貸し出し業務を始めれば地銀との一騎打ちとなり、規模の劣る地銀の経営圧迫は必至であります。

もう一つはJAバンクでしょうか?こちらも預金高94兆円(2015年2月)と相当の規模を誇る中、TPP発効も睨み、農業部門の投資が進む可能性は大いにあります。その場合、ふんだんな資金とコネクションを持つJAバンクも地銀に挑んで来るでしょう。

地銀にしてみればメガバンクの目は海外、りそなは都市型のリテールと棲み分けらしきものがありますが、ゆうちょ、JAバンクという巨大な全国区の二つの金融機関を相手に戦い続けられるものではありません。人口が減少し、地方都市での資金需要は今後、更に弱くなることは分かり切っています。

同じことは都市内の信用金庫でしょうか?日本全国に267行(2014年末)で総預金額は100兆円規模と全部足しても三菱UJFの規模に追いつかないわけ ですから一行当たりの預金高がいかに貧弱かお分かりいただけると思います。その設立目的は「地域で集めた資金を地域の中小企業と個人に還元することにより、地域社会の発展に寄与する」とあります。

具体的に言えば商店街の資金繰りを助けていたという事でしょうか?しかし、ご承知の通り今や商店街はシャッター街と化しています。どうすればよいのでしょうか?

東京都豊島区が面白い取り組みを始めています。増田レポートで消滅都市で唯一23区から名前の挙がった豊島区は高野区長以下「みんなで消滅可能性都市を定住可能都市に変えましょう」の活動をしています。その中で古い住宅を改修して使えるものにする動きが活発化しています。こういう案件に信金が積極的に取り組んでいくことで棲み分け、生き残りを図っていったらどうでしょうか?

地銀はメガバンクでもない信用金庫でもない中途半端さゆえの基盤の弱さがあります。企業は今や一地方から資本の力で全国区、世界にその成長路線にその照準を合わせます。その中で地元企業に地元銀行からというキャッチにギャップが生じてくればその存在感はなお一層脅かされることになるのでしょう。

思い切った再編が望まれるところではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 4月6日付より

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。