3月17-18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が、公表されました。景況判断やドル高による輸出競争力の低下などハト派寄りにシフトした感の強い声明文に対し、ややタカ派寄りへ巻き戻しています。以下は議事録のポイント。
▽利上げをめぐる協議
・複数の参加者は、経済指標と見通しが6月利上げを正当化すると判断。
・その他の参加者はエネルギー価格の下落をめぐる影響やドル高が短期的にインフレを押し下げると予想しており、早期利上げは適切ではない可能性に言及。
・2名の参加者(シカゴ連銀のエバンス総裁、ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁か)は、経済見通しを基づくと2016年まで利上げの必要性なしと主張。
▽ドル高
・複数の参加者は、ドルの一段高は輸出の伸びや経済成長を抑制すると言及。
・数名の参加者は、海外の中央銀行による緩和的な政策がさらなるドル高を招く可能性を指摘。
・別の1名は、海外中銀の緩和策により世界景気が強まり輸出を押し上げると予想。
▽経済鈍化の要因
・2月の大寒波が一部の地域で個人消費を押し下げた可能性。
・複数の参加者は、消費など経済指標の鈍化は悪天候といった一時的要因と見込む。
・1-3月期の成長鈍化は、一部地域での悪天候と西海岸の港湾労働者ストなど一時的要因。
▽オーバーナイト・リバースレポ
・利上げに際し、1日当たり3000億ドルとする応札額の上限を解除する方針を決定。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番のジョン・ヒルゼンラス記者とベン・ルーブドーフ記者の連名で「FOMC議事録、6月利上げをめぐり意見分かれる(Fed Minutes: Officials Divided On Whether June Rate Increase Warranted)」と題した記事を配信。内容は、タイトルそのままでした。
ヒルゼンラス記者、前列右から2番目です。
バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストは、今回の結果を受けて「声明文、経済金利見通し、イエレンFRB議長の記者会見を踏まえると真新しい材料はなかった」と振り返ります。特に利上げ開始時期に対しては、FF金利見通しが下方修正されたように「大多数が年後半(9月から12月)の利上げを予想している」と指摘。利上げペースは「緩やかになるだろう」とまとめていました。同エコノミストの利上げ開始予想は、9月となっています。
今回のFOMC議事録は予想外に弱かった米3月雇用統計前だっただけに、米株の反応は限定的。ダウ平均とS&P500はわずかにマイナス圏へ振れた程度で、小幅高で引けています。FOMC議事録の公表前にニューヨーク連銀のダドリー総裁が6月利上げの可能性を指摘しつつ、ハト派寄りの見解を表明したこともあり株安を抑えたことでしょう。4月28-29日開催のFOMCで、労働市場への判断がどのように変化するかが次の注目点となりそうです。
(文中、カバー写真:FRB/Ustream)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年4月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。