「大阪都」を歩くで(その3、ワシが賛成する理由) --- 山城 良雄

まず画像を見てくれ。、今朝(5/13)、大阪で配られた朝日の折り込みチラシの一部や。図1は維新の会の発行、図2は自由民主党近畿ブロック協議会となっている。総選挙も遠いのに「近畿ブロック」とは、何やら意味深やが、二つのチラシ、見比べたら笑える。


図1


図2

安倍さん。あんた、どっちなんや。人気者やから両陣営が使いたがっているなんて、総裁冥利に尽きるとも言えるが、随分軽く扱われているようにも見える。まあ、ワシら大阪市民は、一国の総理大臣が決めかねるような政治課題でも、適正に判断する知性があるという事なんやな。


さて、表題にもあるように、ワシ、結局賛成することにした。理由を説明する前に、もう少し、論点整理をしておこう。これまでのワシの大阪都シリーズでは、(その1)でも(その2)でも、あまりメディアに出ない議論を掘り出してきたつもりやが、よく議論の俎上に上る定番商品にもコメントしておきたい。

上で紹介した自民党? のチラシが、わかりやすく6つの論点を上げている。よく、京大の藤井さんの反対論が扱われているが、すでにアゴラでも大西さんのサンドバッグ状態や。もう少しマシな反対論の典型として、これを使うことにしたで。並べてみよう。

「大阪都構想に反対すべき6つの理由」

  1. 権限と財源の低下
  2. 初期投資が600億円以上にも
  3. 大阪・関西の成長の核を失う
  4. 二重どころか三重行政
  5. 行政サービスも悪化
  6. 住所変更の負担は直接市民に

さすがに自民党の看板を出しているだけに、あんまり無茶は言うてへんようや。コメントと反論をしていこう。

1)の財源問題、簡単に言うと「5つの特別区の財源を全部足しても旧大阪市の財源より少ない、その分を府(都)に使われる」という考え方や。これ、ある意味で正しい。
そやけど、これまでの市の税金の使い方、後で触れるが、あまりにも不効率やった。これが改善できるなら、少しぐらい府内の他の市町村(たいてい大阪市より苦しい)に、お金が流れる可能性があっても、大阪市民としても仕方ないというのがワシの判断や。

2)プロジェクトを推進する側の見積もり予算は、普通は過小評価される。600億で足りると思っておる「幸せな」有権者は、市内に5人ぐらいしかおらんやろ。
そやけど、仮に倍の1200億、3倍の1800億、もう一声で2000億行ったとしても、今の贅肉行政にメスを入れられるなら安いモンやと思う。

3)政令指定都市がなくなると、財源の減少、企業本社の撤退などが進み、地域が衰退するという「成長の核」論。これは簡単に反論できる。
東京都には政令指定都市はないけど、「成長の核がないから衰退している」とは誰も言わん。終わり。解散。QED。

4)区と府(都)の間を橋渡しする「一部事業組合」が必要になり三重行政になって、かえって不効率という話。実はワシも、同じような議論を(その2)でしている。
そやけど、この問題も、東京23区であまり聞いたことないのと違うかな。要は、特別区が成立したあと、ちゃんと調整すれば(今の大阪の行政では、実はこれが一番難しい)、解決できる(はずの)問題や。

5)負担増や行政サービスの悪化やが、これは基本的に都構想と無関係。各区の判断で、負担の増減やサービスの選択はできる。ただし、財源の範囲内でな……ということは、今後、負担増かサービス低下のいずれか、あるいは両方、誰が何をしようが、避けられる訳がない。
しょせん都構想とは関係の無い悲しい話。むしろ、一部の人にだけ手厚いサービスが行く構造にメスを入れられるなら、ワシ個人としては歓迎したい。

6)住所変更の負担。看板・判子・名刺……はっきり言ってセコい論点や。それに旧住所かて当分の間は使える。近所の商店で、看板の電話番号は「6」がつかない昔の3桁市内局番のまま、というがザラ。ついでの時に変えたらええ。こういうところで見得をはらへんのが、大阪のええとこやろ。

結局、都構想と関係無い問題や些少な問題、東京23区では議論にもなってない(つまり今後の対応次第で回避できる)問題を除いたら、金の話だけが残る。

数百億以上の初期投資をして、市であがる税収の一部を(これまで以上に)市外で使われることになるという損失、これに値するメリットがあるかという話や。ワシはあると思う。

最近、仕事の関係で府内・市内の役所で書類交付を受けることが多かった。こういうことをしていると、区役所の不効率が目立つ。一つの窓口に長い行列が出来ているのに、隣の別担当の窓口職員はボケっとしている。

府内のI市役所。窓口は全案件共通やし、混み合う時には、奥で別の仕事をしていたスタッフがカウンターまで出てきて、臨時の窓口を開く(民間なら当然やが)。

昨年、栄えある早期財政健全化団体から脱出した財政を考えたら、大阪市よりも職員給与などの待遇がええはずがない。機動的に動く分、一人当たりの作業量も多いやろ。それでも、I市の職員の方が、大阪よりはるかに楽しそうに仕事しておる。社会の役に立っているという自覚があると、公務員も随分仕事ぶりが変わる。ちなみに市長は維新の人や。

お話変わって、大阪市の地下鉄駅の補修工事。地上出口を半月近く閉鎖して工事をしていたことがある。通学の中学生やお年寄りがゾロゾロ横断歩道でないのに道路を渡ることになり(これが大阪スタイル)、結構、危険やった。

さて通行が再開して、エスカレーターでも出来ているのか期待してたら、階段通路の壁面と天井にサイディングを張っただけやった。床の汚いタイルもヒビ割れたまま手つかず。

民間なら、終電から始発の間に一晩で仕上げる工事やろ。そう言えば、通行止めの通路の中に人の気配が感じられたこと、一度も無かった。いつ仕事をやったのやら……。

ワシ、学生時代から国内のいろんな都市に住んできたけど、大阪市の不効率、ずば抜けているように思う。維新政権になってもこの始末やから、ある意味で大したモンや。こうなったら荒療治が必要、というわけで都構想賛成となる。

「現状を変えるために成算はないけど大バクチを打つ」という発想は、実際、成功率は低いし、惨状を招くことも多い。第一、ワシの趣味ではない。そやから基本的に維新やら橋下はんやら大嫌いや。けど、そんなこと言うてられんほど、今の大阪はひどい。

ワシの生きているうちには、橋下維新のような乱暴な改革派が市政と府政の両方を押さえることは、もうないやろ。ラストチャンスと市長が言うのも、あながちウソやない。

アゴラでもいろんな人が指摘しておられるが、都構想反対は良くも悪くも現状維持の発想や。現状維持が最も不気味な力を持つのは、「もう改革は間に合わない」と万人が認めだした時や。

昔の阪神タイガース、今のギリシャ、そうそう、東アジアにもそういう財政の国、確かあったな。

おそらく、この機会を逃したら、ますます現状維持勢力が強固になって、大阪自体が行くところまで行ってしまう。あらゆる意味で、日本衰退のトップランナー都市になりかねん。そういう訳で、ワシは渋々ながら都構想賛成に回るつもりや。

今日はこれぐらいにしといたるわ

久々にやる気が出てきた 山城 良雄