村上ファンドの流れを汲む投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントによる猛烈な株式買い占めに晒され、ソフトバンクに資本提携の救いを求めたヤマダ電機ですが、郊外型の不採算店を中心に46店を閉鎖し、新店は中国人の「爆買い」を期待したと思わせる都心型に絞る方針を発表しています。全国でおよそ1000店の直営店、地域密着のフランチャイズ店舗と合わせて国内外に4,000店を超えるネットワークを築いてきた家電時代の寵児も厳しい試練の風に晒され、思い切った路線の転換を迫られています。
確かに、業績が酷い状態です。 消費財増税による駆け込み需要の反動の影響があったとしても、それは他の家電チェーンも同じことです。2015年3月期決算を比べると、確かにケイズホールディングスも売上を落としていますが、売上が2.6倍もあるヤマダ電機の純利益が93.4億円で、ケーズホールディングスの150.3億円という結果は、いかにヤマダ電機が稼ぐ力を失ったかを象徴するようです。
2014年4月以降は月次売上の前年比でマイナスが続き、ようやく2015年4月に前年を10.5%上回ったとはいえ、それは前年が駆け込み需要の反動減で15.2%も売上が落ちていたからで決して回復の糸口を得たという感じではありません。
圧倒的な購買力を背景に、家電メーカーの営業担当を呼びつけ価格を下げろとバイヤーが迫るスタイルは往年のダイエーを感じさせますが、なぜこんなに急激にヤマダ電機が窮地に陥ってしまったのでしょうか。結構大きな時代変化の狭間で複雑骨折してしまったのじゃないかと感じます。
まず家電そのもので大型の売り物がなくなりました。PCも液晶テレビも市場そのものが飽和してしまいました。スマホで一時は売り場が賑わいましたがそれも二年連続で出荷数量が落ち成熟してしまいました。
しかし、それよりも大きな流れ、店舗で商品を確かめ、購入はネットという購買行動の変化、いわゆるショールーミングの影響が大きくヤマダ電機を襲ったのだと思います。
昨年クロスマーケティングが行った調査では、ショールーミングの経験者は昨年ですでに16%に達していて、そのうち83%がショールーミングを継続しているといいます。
ショールーミングに関する調査
いやいやショールーミングどころか、そもそも家電の売り場に行くことが億劫なので、よほど急ぎで消耗品を買い求める以外はいきなりネットで購入することが定着してしまった人も結構少なくないと思います。実際、エアコンですらネットで購入し、取り付けもネットの取り付け専門サイトで依頼したことがありますが、価格はもちろんのこと、サービスの品質もよかったので、 家電量販店の生きる道も大変だなあと感じました。
ただ価格の安さを訴えても、ネットとの競争は際限がありません。アフターサービスや購入時に相談にのってもらえるなどのサービスの質が問われくるのでしょうが、日経ビジネスの行っているアフターサービス評価では、家電量販店ワースト1の汚名を8年連続でとり、しかも2014年度版でアマゾンの再利用意向率が92.2%に比べ、ヤマダ電機65.7%と劣ったのは、厳しい結果です。
ヤマダ電機が怒りの訴訟を連発 日経BP社のランキングめぐり – ライブドアニュース
しかもサービスの質を追求しようとすると従業員の人たちの満足度や士気が重要ですが、ブラック企業実行委員会が主催する「ブラック企業大賞2014」も受賞とあってはどうなんだろうと思ってしまいます。
「爆買い」需要を積極的に取り込むのもいいのですが、メーカーと流通の力関係の優位性で成長してきた、つまり売り手側の事情で伸びてきたヤマダ電機がほんとうに向き合わなければならないのは消費者の購買行動の変化ではないでしょうか。売り手主導から買い手が主導する時代に大きく時代が変化し、家電メーカーも家電量販店も買い手とのどのような関係を築くかに焦点が移ってきたはずなのですから。