2014年の人口動態統計で出生率が再び下がり始めたことが明らかになりました。有識者会議では1億人の人口を維持するための方策を検討していますが、そのためには出生率が2.07にならねばなりません。今回発表になった2014年の出生率は1.42で前年を0.01ポイント下回ってしまいました。
実は出生率は2005年の1.26をボトムに回復基調が続いていました。それは第二次ベビーブーマー層が出産適齢期を迎えていたためであります。そのピークがほぼ終わり、2014年には下落基調に転じた可能性があるとみられています。合計特殊出生率の推移の表をみると一目瞭然なのですが、第二次ベビーブーマーを過ぎると一気に下落傾向が出ています。子供は親がいないと生まれませんから自然の摂理からすればこれから5年もすれば再び危機的状況に陥る可能性はあります。
国も様々な対策を取っています。育児の環境を整えたりご主人の援助を求めやすくしたりするなどの工夫が凝らされています。ただ、個人的には何か違う気がするのです。それは国の対策が子供が出来た後の子育ての部分についてフォーカスしすぎているからでしょうか?本来であれば子供が欲しくなる方策が重要であって、産んだ後より産む前にその気になるメンタル部分の改善も重要です。
例えば結婚したくなり家族を作るという雰囲気を呼び戻すことも必要でしょう。ですが、今の社会を見ていると男性と女性の価値観に大きな相違があります。まず男性の女性への興味が以前ほど熱血的ではありません。草食系に見る淡泊さでしょうか?私の周りにも独身男性は結構いるのですが、彼らにその気がないのです。それより仕事をするとか、自分の趣味の世界に生きるといった我儘さが先行していませんか?誰かと「共同生活」をするのはうざい、と考えている人もいます。
シェアハウスでも市場は女性が圧倒的で男性は共同生活が苦手なところがあります。ルールに縛られたりきれいに使わなくてはいけないという気遣いが面倒なのでしょう。
一方の女性。独身女性の要求レベルが非常に高い気がします。以前のような短絡的結婚で成田離婚といった間違いを犯さなくなった半面、男性との10年後、30年後、50年後のピクチャーをより現実的な稼ぎとか、安定感とか、趣味や考え方をまるでジグソーパズルを組み合わせる様に探しているようにみえます。言い方は悪いかもしれませんが、昔は見合い結婚を含め、結婚したら夫婦双方が自分の悪いところを直しながら目をつぶるところや我慢しながら関係維持をしていく努力が見られました。いまは初めからパーフェクトランディングを試みて、失敗しない結婚を探し求めているように見えます。
そうなるとどうしても女性は同世代の男性では満足できず、年上に惹かれてしまう傾向があります。もともと女性の精神年齢の方が男性より上と言われていますので世の中の結婚観のアンバランスさが出生率の低下に繋がってきているように思えます。
つまり私は保育所や会社の育児休暇や子ども手当などは確かに子供を作るアシストにはなるけれどそれ以上に若い男女の価値観の形成が今日の少子化を生んでいると考えています。
例えばパンケーキを食べたいと思う彼女と同じ行列をするならうまいラーメン屋に並びたいと考える彼氏のようなすれ違いであります。それなら彼女は彼氏と行くより女子会の方がずっと話が盛り上がるというわけです。
韓国も同様の低出生率、中国も都市部では出生率が下がっています。結局その背景は物質文化なのだろうと思います。カナダやアメリカにいるとライフスタイルはアジアほどの変化はありません。新製品にもそんなに飛びつかないし、ガジェットに狂う人も遥かに少ないです。親と子の間でジェネレーションギャップが東アジアより少ない気がします。
安倍政権は女性の社会進出を掲げています。これは非常に大事なことですが、女性の社会進出と出生率には背反の関係があるとする研究者もいます。女性が社会に目覚めれば目覚めるほど結婚が遠くなるというのです。それが正しいかどうかは別として明らかに言えるのは若い女性は以前にも増してしっかりしており男性との自我意識のアンバランスが少子化の一因になってやしないでしょうか?
少子化対策については学術的研究のレビューと抜本的見直しが必要になるかもしれません。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 6月10日付より