きのう収録した「そこまで言って委員会」(21日放送)でも、洪熒氏(元駐日韓国大使館公使)が、大韓民国は「抗日60年」の抵抗運動に勝利した戦勝国だと繰り返して、うんざりした。
日本人は知らないだろうが、韓国の公式史観では、1910年の日韓併合の30年前から日本が朝鮮を搾取していたことになっている。日本の侵略戦争には敗北して併合されたが、その後も抗日戦争が続き、1945年に勝利して大韓民国が建設された、というお話になっているのだ。
実際には、日本占領下の朝鮮半島では「抗日戦争」なんか起こらず、24万人の朝鮮人が志願して「日本兵」として出陣した。1948年にできた李承晩政権は上海にいた亡命政権で、アメリカの傀儡だった。彼らはサンフランシスコ条約で「戦勝国」に入れてもらおうとしたが、アメリカに拒否された。朝鮮半島は(戦敗国)日本の領土だったからである。
日韓併合は、当時の大韓帝国が閣議で承認した正式の条約であるばかりでなく、桂・タフト協定でアメリカがフィリピンを支配するとともに日本が朝鮮を支配することが認められた。それは当時の国際社会で承認され、朝鮮人は「日本国民」として1945年まで生活してきたのだ。
これは右とか左とかいうイデオロギーの問題ではなく客観的な事実だが、彼らの話には「日韓併合は事実上の侵略だった」とか「志願兵は無理やり志願させられた」とか「慰安婦は事実上の強制だった」とか、やたらに「事実上」の感情論が出てくる。その証拠は何もない。
朴政権もいまだに「抗日60年」の被害妄想史観を繰り返す。これは白井聡氏のような劣化左翼や佐伯啓思氏のような劣化右翼の語る「戦後70年属国論」と同じようなルサンチマンで、日本では誰も相手にしないが、マスコミが統制されている韓国では一定の国民が信じている。
国民を結束させるために、政権がこういう負のナショナリズムを利用することは珍しくない。幕末の尊王攘夷から太平洋戦争に至る日本の軍国主義も、「欧米列強のアジア支配に対抗する」という負のナショナリズムだった。逆にいうと、そういうネガティブな形でしか国家をまとめられなかったのだ。
それは福沢諭吉が「政府ありて国民なし」と指摘したように、本来の意味での国民(ネーション)が日本にも韓国にもないからだ。ヨーロッパ諸国は、数百年にわたる宗教戦争を通じてネーションを作り出したが、日本は封建制を「古層」に残したまま擬似近代国家になった。
1000年以上にわたって中国の属国だった韓国には、もともとネーションが存在しないので、それを反日意識で作り出そうとする朴槿恵政権の試みは、挫折が運命づけられている。日本政府が相手にする必要はないが、植民地支配の中で朝鮮人を「二等国民」として差別した日本人が、彼らのトラウマを生み出した歴史は反省すべきだ。