米連邦公開市場委員会(FOMC)直前恒例、CNBCによるウォールストリート関係者を対象とした世論調査「Fedサーベイ」をお伝えします。39人を対象とした6月分の直前レポートでは、利上げ開始は9月を予想。金利正常化は景気後退をもたらさず、米株ラリーは7年目を迎えるという楽観的な見通しとなっています。
▽年内利上げ
年内利上げを予想する割合は92%となり、前回の84%から上昇しました。米5月小売売上高や米5月生産者物価指数をはじめとした経済指標を背景に、前回より織り込み度が強まっています。国際通貨基金(IMF)の要請に応じるとは、考えていません。
▽利上げ開始時期
前回と変わらず、9月の開始を予想しています。
▽2015年末、2016年末のFF金利予想
今回は0.53%と、前回の0.54%から下方修正。2016年は逆に前回の1.46%から1.56%へ引き上げられ、年内のFOMCを8回予定するなかで4回の利上げを織り込む計算となります。前回の3.7回から、引き上げてきました。
FF金利見通し、2014年9月からほぼ右肩下がり。
▽バランスシートの縮小
今回は2016年7月となり、前回の2016年4月から後ろ倒しさせました。
▽利上げ終了時期とFF金利の着陸点
利上げ終了時期は前回と同じく2018年1-3月期ながら、FF金利の打ち止めポイントは2.85%から3.06%へ引き上げています。3月時点のFF金利長期見通し・中央値にあたる3.75%以下にとどまりました。
▽成長、インフレ見通し
成長見通しにつき、2015年は2.32%と前回の2.7%から下方修正しています。2016年も前回の2.81%から2.78%へ引き下げられました。インフレ見通しをめぐり、2015年は前回の1.0%から1.17%へ上方修正、2016年は2.3%と統計開始以来で最高となっています。
▽S&P500、米10年債利回り見通し
S&P500 2015年末は3.6%上昇、2016年末は10%上昇
(前回は2015年末につき2199p、2016年末につき2247pを予想)
米10年債利回り 2015年末は2.64%、2016年末は3.24%
(前回は2016年末につき2.89%を予想)
▽米経済のリスクと景気後退リスク
地政学的リスクと世界景気の減速が米経済リスクの1位と2位を飾り、利上げは4位にとどまりました。景気後退リスクは従来の14.7%とほぼ変わらず、15%。少なくとも、Fedの利上げを警戒している気配は感じられません。
▽ギリシャのユーロ圏離脱
ギリシャが向こう3年以内にユーロ圏から離脱するとの予想は50%に達し、前回の39%から上昇。ギリシャ支援協議の膠着で、一段と懸念の声が高まっています。
——その他、最大雇用での失業率を4.8%と予想。3月FOMCのレンジより一段の余裕をみています。回答者はまた、ドル高への警戒も崩していません。ジャニー・モントゴメリーのフィクスト・インカム・ストラテジストのガイ・ルバス氏は、「ドル高が経済活動にどのような影響を与えるか見極めるべき」と指摘。経済政策リサーチセンターの共同ディレクターであるディーン・ベーカー氏も、貿易収支が成長阻害要因とし「ドル安の必要性を説く人々が多くない点は特筆に値する」とのコメントを寄せていました。足元でドル高は落ち着いているものの、利上げ開始に向け再びドル高が加速する可能性も拭えず。利上げ開始の時期も問題ながら、ドル高への影響も見逃せません。
(カバー写真:Butz.2013/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年6月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。