コンビニ間の競争は、超目玉商品の価格競争で顧客争奪戦を派手にしかけるスーパーの競争と違ってコンビニ間の競争は静かで、なかなか気が付きません。しかし現実には店舗の存続すら賭けるような熾烈な競争が展開されています。そんなコンビニ間戦争が鮮明に見えてくるのが関西です。
ローソンの発祥の地が関西ということもあって、西日本はローソンが地域トップの府県が多いのですが、とくに関西は関東圏に次ぐ市場で、そこをセブン-イレブンが攻略したいと考えるのは自然です。実際この数年、ローソンのすぐ近くにセブン-イレブンの新店が建つことが目立って増えてきています。
コンビニではセブン-イレブン一人勝ちで、売上シェアで見ると2005年の33.6%から2014年には41%とシェアを伸ばしてきています。とくに2010年以降に『近くで便利』を掲げ店舗数を拡大してきたことが効を奏し、直近の5年間で5.6%もシェアアップしていますが、さらに国内で売上を伸ばそうとすると、関西での出店増、シェアアップをセブン-イレブンが狙っても当然です。
コンビニ勢力図 [ 2015年 ]|新・都道府県別統計とランキングで見る県民性
これまでも、関西攻略を実に見事にセブン-イレブンは進めてきました。最初は周辺部にぽつぽつと店ができ周辺部を攻略すると、次に中心部にも進出し、やがて中心部を攻め落とすというランチェスターの法則を絵に描いたような出店戦略でした。いよいよ仕上げに入ってきたということでしょう。
ローソンにとっては、個店の稼ぐ力、日販で差がついた状態のままでは、この競争に負けます。2014年のローソンの平均日販は53.3万円ですが、セブン-イレブンは65.5万円です。もしローソンとセブン-イレブンの店が隣接すれば、その差が蓄積されていき、やがてはローソンの店は閉鎖に追い込まれるということもありえます。実際、そんな静かな戦争が現実に起こってきているのです。
セブン、圧倒的強さの秘密 潰し合い突入のコンビニ業界、大きな差を生む「個店の稼ぐ力」 | ビジネスジャーナル
ローソンにとっては、個店の稼ぐ力、日販の格差をなくさないとこの攻防は極めて厳しくなってきます。 この稼ぐ力で差がでるのは、日経の『記者の目』の特集で書かれているように、「大半は夕方、夜間に生まれている」のだと思います。
結局は、コンビニの集客力で違いがもっともでてくる、お弁当や惣菜などの日配商品でローソンはオーナーが商品廃棄による費用負担を恐れて発注を控えてしまい、夕方から夜は欠品が増え、機会ロスしてしまっているのです。ローソン、四十にして「もがき続ける」 :日本経済新聞
その差が生まれるのは、情報システムの違いによるところも大きく、ローソンは今期からデータ分析に基づいた半自動の発注システムを導入します。それでセブン-イレブンからの攻勢に備えようとしています。
片や関西におけるセブン-イレブンの弱みは「味」です。関西の店舗の売上高が2年ほど前から伸び悩み始めているようですが、その原因は弁当や惣菜などの味が関西の嗜好に合っていないからです。実際、関東では他のコンビニと較べてセブン-イレブンのほうが美味しいと感じますが、関西では決してそうではありません。今ひとつ物足りなさを感じてしまいます。
それでは出店しても、ローソンと勝負がつかず、立地のいいほうが勝ちます。SankeiBizによると、そんなこともあって、セブン-イレブンは関西の「だし文化」にあった商品開発を強化しはじめているそうです。
関西でローソンに勝ちたいセブン 「だしが命」こだわり商品開発戦略 (1/4ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)
ローソンは、新浪前社長がサントリーに移られ、玉塚社長が指揮を執られるようになって、eコマースでの、アマゾンや佐川などとの提携、システムではクラウドへの以降、さらにセミ自動受発注システム導入、一般用医薬品(市販薬)を扱う店舗を現在の約100店から1000店以上に拡大する方針を掲げるなど、なにか地に足がついた改革を積極的に進められている印象を受けます。
ローソンがセブン-イレブンの後追いでドーナツを売り始めたことに触れ、夏目剛さんがちょっと残念な施策で、だから”万年2番手”を脱せないのではないかとご指摘ですが、そうかもしれないとしても、水面下のオペレーションで起こっているコンビニ戦争のほうが面白いのじゃないかと感じます。というかミスタードーナッツのものまねでしかないことをやるセブン-イレブンにも死角ありということでしょうか。
だからローソンは”万年2番手”を脱せない | 夏野剛のググっても絶対出ないハナシ | 東洋経済オンライン |