知財本部:コンテンツ海外展開策は? --- 中村 伊知哉

知財本部、コンテンツ会議。コンテンツ海外展開策を論議しています。
今回は3名のゲスト。NTVからコンテンツ「を」売る話、伊藤忠からコンテンツ「で」商品を売る話、HTBからコンテンツと地方創成+インバウンドの話を伺いました。

コンテンツの輸出増を目論んできたのですが、現実は、輸出総額が減少しています。家庭用ゲームが大幅減であることが主因です。コンテンツ輸出の大部分をゲームが占めていましたからね。
これに対し、今政府が力を入れている放送コンテンツはというと、総務省によれば放送権は横ばいだが、番組配信やフォーマット販売は11年70億が13年105億と大幅増だそうです。

NTVのフォーマットは、\マネーの虎、仮装大賞、はじめてのおつかいが売れてるとか。今や海外との共同制作は放送+ネット+モバイルの全露出を前提にしているとか。以前とかなり状況が変わりましたね。
シンガポールで活躍する宮野さんによれば、東南アジアではネットとケーブルの普及によりコンテンツ過剰の状況だそうです。日本が強いのはアニメ+キャラ、食、旅行だそうです。その強みにどうフォーカスすればいいでしょう。
強みが確立したコンテンツもあります。たとえばドラえもん。ドラえもんの台湾イベントには有料なのに170万人が来たとか。藤子プロの篠田さんによれば、台湾がインバウンド策としてドラえもんを使った、んだそうで。したたかです。日本には、したたかさが足りない。

ニッポン放送の重村さんは言います。「コンテンツ海外展開は個別には進みだした。だが、テレビ、音楽などジャンルごとに動きがバラバラ。観光など他ジャンルとの連携も弱い。情報の集約、連携が重要。」同意します。業界横断のマッチングは、政府にできる仕事でしょう。
「ドラえもん、ドラゴンボール、ワンピース以降、アニメは海外に出て行けてない。国内は高校生以上が見るアニメ中心で、深夜放映。海外でウケるアニメを育てていない。」うぅむ、成熟した国内アニメ市場への対応と、海外展開との軸がズレているんですね。さて、これはいかがいたしましょう。

さて、ここで質問です。
コンテンツの海外展開は、ここ数年の重要政策となっています。でも、政策目標は変化しています。かつてはコンテンツの海外売上増が目標でした。今は、コンテンツを尖兵として、食、観光その他さまざまな産業が活性化するクールジャパン策に力が入れられています。
コンテンツ「を」売るという政策目標から、コンテンツ「で」売るという政策へとシフトしているわけです。だが、問題は、その「指標」が明確ではないということです。コンテンツによる海外の「効果」をどう測定するか。その「外部効果」を測る手法は確立されておらず、政策の手触り感が薄いんですよね。

とはいえ、知財本部のミッションは、毎年の知財計画を作り、実行に移していくこと。
海外展開の課題は、1)分野連携・情報共有、2)支援策の継続性確保、3)権利処理円滑化が挙げられます。それを知財計画にどう落としこむか。これまた悩ましいテーマです。
ところで、映像を中心に海外展開策を議論しているのですが、ラストに「重点を置くべきはアニメか実写・ドラマか」と横尾事務局長から重い質問が投げられました。長期・短期の効果、キャラクタービジネスや観光などの波及効果、ターゲット層の違いなど、政策意図によってそのバランスは変わります。でもそういうことを整理するのが知財本部の役目。どうでしょう?


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年6月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。