マクドナルドがチャレンジするも空振りに終わる

大西 宏

マクドナルドの月次セールスレポートが発表されています。5月末に、サイドメニューが追加料金無しで選べる新バリューセットの投入、スマイル0円の復活、安全対策強化など、マクドナルド再生をかけたオペレーションが展開されたので、疑心暗鬼ながら、どれほど成果がでたのかと見に行くと、全店の売上高が前年同月比でマイナス23.5%と、痛々しい数字がでていました。


マクドナルドの見解としては、「ビジネスの回復に向けたリカバリープランを実行しており、客数は改善の傾向にある」とまるで大本営のような発表をしていますが、ちょっと甘いんじゃないでしょうか。あきらかに作戦の失敗、空振りに終わった感じです。

確かに、異物混入問題の影響で、激しい客離れが起こり、なんと客数が前年同月比でマイナス28.5%と最悪の減少となった1月以降、客数の対前年同月比の推移を見ると、減少幅は小さくなってきており、6月はマイナス10.4%で、客離れもようやく減速しはじめたというだけで、客離れが止まったわけではありません。

実数がわからないので、2年前の2013年各月の客数を100として推移を見てみました。おやっと感じたのは、新メニューが投入されたにもかかわらす、客数が増えていません。それに、 上海福喜食品消費期限切れ問題発覚当時の水準にも回復していないことがわかります。それだけではなく、キャンペーンの値下げで客単価が14.5%下がってしまったので、いったい何をしているのかわかりません。

メニューというよりも、マクドナルドそのものの賞味期限が切れてしまっているのに、サイドメニューの工夫やメニューの強化をはかるとか、値頃感をだす試みとか、店のオペレーションを改善したりと頑張ったところで、インパクトが弱く、努力のわりに効果がでてこないのでしょう。

きっとマクドナルドが空振りを繰り返すのも、目指すところを「お客様と心でつながる、モダン・バーガー・レストラン」としてしまったことに原因があるように思います。

それでは、しょせんはハンバーガーをいろいろいじって変化させる範囲のチャレンジしかしないということになってしまい、思い切った発想がでてきません。「ナンとカレー」とか「ケンタッキーも真っ青なフライドチキン」といったバーガーを超えたメニューへのチャレンジは最初からはねられてしまいます。
それに「モダン」、「バーガー」、「レストラン」ってなんじゃらほいと思ってしまうのです。いかにも古めかしく、心ときめきません。せめて

 「新しさと出会える」
「バーガーを超えた」
「コミュニティスペース」

とでもすれば、また違った風になってくるのではないでしょうか。

 きっと「マクドナルドのメニューや体験の価値」で、マクドナルド側のカサノバ社長やそのチームがこだわっているスタイルや中味と消費者が感動してくれるスタイルや中味に、ずいぶんギャップがあるのでしょう。これは感性、感受性の問題なので、きっと外部からの助力を求めるほうが正解かもしれません。しょせんアメリカ流を押し付けても日本ではニッチな世界でしかありません。日本発を繰り出すぐらいの創造力を発揮すれば、マクドナルドも再生できるのかもしれません。要は経営の問題ですね。そろそろカサノバ社長も賞味期限切れだと引導を渡されるまえに、大志を抱いて、大胆なチャレンジに向かわれることを期待します。