愚民の上にチプラスあり

5か月程前の2月3日、日経新聞記事「経済教室」は「激動ユーロ(下) 統合と分断、絡み合う力学」(遠藤乾 北海道大学教授)というものでしたが、その中に『欧州各国民の各国への印象にみる「ステレオタイプ」』(12、13年)が載っていました(対象7カ国:イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ギリシャ、ポーランド)。


米調査機関「ピュー・リサーチ・センター」による上記結果にあって取り分け興味深いのは、①ギリシャ以外の全対象国はドイツが「最も勤勉」「最も信頼」と認識していること、②「最も勤勉」「最も信頼」とギリシャを認識しているのは本人達だけであること、③ギリシャとドイツは相互に「最も不信」と認識していること、④ドイツやイギリス等4か国がギリシャを「最も怠惰」と認識していること、の4点です。

私は、「最も怠惰」「最も不信」の両方に当て嵌まるのはギリシャでないかと思います。何れにせよ「ギリシャ問題」を巡る一連の騒動というのは、正に孔子が言う政治の要諦「信なくんば立たず」(顔淵第十二の七)そのものでありましょう。

『論語』には此の一節以外にも、例えば「信なれば則(すなわ)ち人(ひと)任ず…信義に満ち偽りのない人には、他の人は安心して全てを任せるものだ」(陽貨第十七の六)や、「人にして信なくんば、其の可なるを知らざるなり…人間関係、人間の社会は信義に基づいて成り立っている。信義なくしては人間関係も社会も成立しない」(為政第二の二十二)等々、「信なくんば立たず」と同義の言葉が随所にあって信というものが如何に大事なのかが分かります。

『今日本に「この人民ありてこの政治あるなり」』(12年5月31日)というブログの中でも福沢諭吉が『学問のすゝめ』で述べている次の言葉、『かかる愚民を支配するにはとても道理をもって諭すべき方便なければ、ただ威をもって畏(おど)すのみ。西洋の諺に「愚民の上に苛(から)き政府あり」とはこのことなり。こは政府の苛きにあらず、愚民のみずから招く災なり。愚民の上に苛き政府あれば、良民の上には良き政府あるの理なり』を御紹介したことがあります。

日本時間の16日午前、ギリシャ議会はEUより「金融支援の条件として要求されていた財政改革法案を賛成多数で可決し(中略)ギリシャの財政破綻はひとまず回避されそうだ」との報道がありました(賛成:229票、反対:64票、白票:6票、欠席:1人)。

先の国民投票で6割以上が反対票を投じたにも拘らずチプラス首相は当該投票の後あっと言う間に宗旨変えをし、そして今度はドイツ側の軍門に降ったが如く修正提案を行い自国議会の説得に当たり造反閣僚を更迭するといった具合に、一体何たる茶番劇をやっているのかと呆れ果てるしかありません。

「事実は小説よりも奇なり」という言葉もありますが、わざわざあのような形で国民投票まで実施をし世界経済を嵐の海に巻き込むような真似に踏み切ったのは暴挙以外の何物でもなく、チプラスという男は全くの愚人としか言いようがありません。

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