今国会の混乱した原因は、昨年の閣議決定の段階で決着していた(総選挙でも争点にならなかった)安保法案の違憲性が、違憲派の長谷部恭男氏を与党側の参考人として呼ぶという自民党(船田元氏)のオウンゴールで、土壇場になって蒸し返されたことだ。
これをきっかけにして朝日新聞は、120人余りの憲法学者をまるで国民の代表であるかのように扱って、そのアンケートを派手に取り上げ、野党も「憲法違反」を錦の御旗にして騒いだ。
しかし楊井人文氏も指摘するように、このアンケートで77人の憲法学者の自衛隊が憲法違反(可能性も含む)と回答したのに、99人が「憲法改正の必要はない」と回答したのは、論理的に矛盾している。
憲法違反ではない(可能性・無回答も含む)と答えた45人が改正の必要がないと答えるのは理解できるが、残りの54人は自衛隊は違憲だが憲法改正の必要はないと考えていることになる。これを論理的に理解することは困難だが、あえて想像すると、次のいずれかだろう。
- 自衛隊は「戦力」ではないと解釈すればいい
- 違憲だが解散するのは無理なので放置する
- 違憲だから自衛隊は解散すべき
1は井上達夫氏のいう修正主義的護憲派(解釈改憲派)で、彼らが安倍政権の解釈改憲を批判する資格はない。2は原理主義的護憲派(ご都合主義派)だが、3はまさに第9条原理主義だ。
このうち論理的に一貫しているのは3だけだが、ほとんどいないだろう。残りの1も2も、非論理的なごまかしだ。こういう人々は政治家には多いが、学者を名乗る資格はない。学者とは、学問の論理に忠実なこと以外に価値はないからだ。