ロッテお家騒動が韓流ドラマ的すぎな件

新田 哲史

どうも新田です。ガムを噛まない私のお口の恋人はタリーズのコーヒーです。
私が野球記者だった一昔前、「ロッテのお家騒動」といえば、2009年のボビー・バレンタイン監督派VS瀬戸山球団社長率いる旧ダイエー軍団のハルマゲドンに代表される球団のお家芸だったはずなのですが、ここ数年は、本社の跡目争い問題に進化しており、この27日には、1月に役職を解任された長男が創業者の会長を連れて突然、西新宿の本社に出現し、会長が、自分以外の取締役を全員解任する旨を通告するという騒ぎが勃発。日経新聞のおとといの朝刊ではドキュメンタリータッチでその模様をお伝えしております。


ロッテ重光一族の乱 経営権巡り対立
■長男・宏之氏側、父伴い「実弟ら解任」
27日 武雄氏は27日、宏之氏のほか長女の辛英子(シン・ヨンジャ)氏ら親族5人とチャーター便で韓国を出発し、午後に東京・新宿のロッテ本社に乗り込んだ。社員を集めると、副会長を解任されて何の権限もないはずの宏之氏が突如、「武雄会長を除くロッテHDの全取締役の解任を決めました」と宣言した。横では車いすに乗った武雄氏が黙って見守っていた。この話を聞いたロッテ幹部は「取締役の解任は株主総会の決議事項のはずだ。むちゃくちゃなやり方だ」と語った。(2015年7月29日・日本経済新聞)

解任された長男が復権のためのクーデターを仕掛けて、車いすに会長を乗せて突然本社に現れる。しかも会長のご息女まで伴っているなんて、キャストそろい踏みの展開。まさにその時間帯にBSフジかBS朝日あたりで放映されている安っぽい韓流ドラマの再放送をリアルに描いたような財閥一族の愛想劇です。ロッテは日本だと菓子メーカーのイメージしかありませんが、韓国ではホテル、デパート、遊園地などを手がける同国5位の財閥で、3兆円規模の売上を誇っており、先ごろのお家騒動で話題になった大塚家具(売上555億円)とはスケールは遥かに上回ります。

ただ、その割にいまひとつワイドショー的に盛り上がらないのは、少し意外。有名ブロガーさんの投稿もあまり見かけませんでした。韓国ルーツの企業だという側面があるからと思いつつ、ネトウヨの好物ネタで盛り上がりと思ったんですがね。あるいはマスコミ側も、東芝の問題でも指摘されているように、一大スポンサーということで、どこか遠慮しているのかもしれません。次男側の反撃で会長が代表権を取られ、長男のクーデターがあっけなく1日で鎮圧されてしまい、大きな混乱も当面なさそうということで、大塚家具ほどには民放がワイドショーの騒ぎづらいような印象もあります。

※日経新聞にしては刺激的な「一族の乱」の見出し

■跡目争いの噂は何年も前から
なお、本件の内幕については、今後の週刊誌、あるいはネットではJB Pressの記事あたりをお読みいただければと思いますが、JB Pressの記事では、「2人の兄弟については、数年前までは『不仲説』はさほどなかった」としております。しかし、私がマリーンズを担当していた2009年には既に噂にはなっていたので、「あれ?」という思いもあります。

ロッテの後継者問題はもうこの10年ほど懸案事項となっており、とりあえず、長男の宏之さんに日本事業を、次男の昭夫さんに韓国事業を任せてきました。野球記者としての立場で当時聞いた本社情報なので、経済ジャーナリストの皆さんの取材情報とは異なる部分もあるかもしれませんが、長男派と次男派でグループ内がギクシャクしている話は社外にそれなりに漏れ聞こえておりまして、それこそ、球団の現場でもバレンタイン体制の崩壊の裏に両派の暗闘が底流にあるという、まことしやかな情報も入ってきたこともありました。

ちなみに、その噂が出た根拠が今回の背景を補足することになるので説明しておくと、ロッテグループ内では、次男の昭夫さんの方が経営者として「できる人」と認定する見方が強かったようです。実際、韓国ロッテの方が約10倍(当時、現在は20倍)の規模を誇り、アジア市場等のグローバル展開もしているので、後継者は次男の方がふさわしいと思われたわけです。一方、長男は、将来縮小が見え見えの日本市場を任せて細々と無難にやらせるのではないかというのは自然な流れでした。

■連結で6兆円を超える究極の同族経営
野球絡みでいうと、ロッテ球団が川崎から千葉に移転するプロジェクトを仕切ったのは、次男の昭夫さん。実際、韓国に拠点を移した後もオーナー代行を務めて実質球団のオーナーを務められていますので、グループ内で最も有名な子会社である球団を任されていた点からも後継者の最有力視されていたように感じます。この間、長男派と次男派の確執が存在するかのような噂があったわけですが、今となって考えてみると、バレンタイン監督退任時の混乱を始め、球団のお家騒動が世間の耳目を集めることは、長男派が溜飲を下げる材料になるのは論理的には付合しますがね。

まあ、このあたりの真相を今更追及しても意味がないどころか、すでに確執が全面戦争に発展しており、長男サイドの株主総会の逆襲が注目されています。現場で働く社員の皆様も「あー、また始まったよ」という同族企業ならではの悲劇にご同情申し上げます。

それにしても、日本国内で売上高4000億円、韓国では6兆円超という規模を誇りながら、西新宿にある持ち株会社が全グループを統括し、その持ち株会社は上場していないというのも、アジア的な究極な同族経営のコーポレートガバナンスというべきなんでしょうか(韓国はグループ内の一部の会社が上場はしているようですが)。そのあたり、株に詳しい方、教えて下さい。ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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