どうも新田です。今週の週刊ポスト(15年8月21・28日合併号)、「フジテレビがソフトバンクに買収される日」で、私のコメントが載ったんですが、半分くらいは編集部の方で加筆しておりまして、いやはや、週刊誌コメントの痛烈な「洗礼」を受けた次第です。
もともと取材の経緯としては、日経新聞のFT買収を機に思いついた企画らしく、国内メディア再編に言及したブログを書いていた私に取材があったものです。取材をオファーしてきた記者のKさん曰く、「お盆休みの妄想記事だが、専門家のコメント部分はリアリティーはしっかりもたせたい」ということでした。
具体的に言うと、この部分は私、言ってません(きっぱり)
メディア経営に詳しいソーシャルアナリストの新田哲史氏はこう読む。
「地上波のキー局は放送法で1社が3分の1以上の株式を持てないことになっており、外資の保有比率は5分の1未満に制限されています。そうして事実上、買収できなくした上で、格安な電波使用料で放送事業を寡占しているのが、テレビ局による電波利権です。
取材は携帯でのやりとり。確かに外資規制や電波使用料の件は出たものの、3分の1の細かい数字とかは先方でまとめたもので「テレビ局による電波利権です」(キリッ)なんて言い方してないんだけどな(マジ)。ほかにもTPPのくだりなんて私が言ったことになってますが、そもそも俺専門外だし、要は記者が勉強した部分を地の文で使えばいいものを、わざわざ他人の談話の形にしているのは理解しがたいところです。
しかし度し難いのは、今回の記事のテーマになっている肝の部分を、私から指摘したような形になっていること。
「今回のFT買収で、日本のメディアの意識は海外進出に向かうでしょう・・・(中略)コンテンツをいかに世界に発信していくか問われるようになるが、それには大きな投資資金が必要になる」
うん、このあたりは話したかな。しかしこの後は俺言っていない。
なにもその資金の先が外資である必要は無い。そこで新田氏は、一つの興味深いシナリオを挙げた。
「一番インパクトのある組み合わせは、ソフトバンクがフジテレビを買収することでしょう」
え?いやいや、これってポストの記者さんから提示されたシナリオなんだけど。。。(絶句)確かに、その買収が実現すればインパクトがある云々は話したかもしれないが、それは常識的な受け止め方の範囲だろうっての。
ちなみに、私が実際に記者の方とやりとりしたのは、メディア買収で可能性が高いのは経済コンテンツを持っている媒体であって、朝日新聞が東洋経済を買うシナリオを私の方から指摘して長めに話しましたが、それではインパクトに欠けるということでしょう。取材の段階でやたらにテレビ局の買収の可能性を記者さんが再三口にするものだから嫌な予感はしていたんですが、やれやれという思いです。
まあ、今回の取材の後に、以前ポストの取材を受けてコメントを大幅加筆された被害者の先輩である池田信夫先生からは「危ないよ」と言われていたので、多少の加筆は想定内だったんですが、それにしてもねえ。
要は記者側がリサーチしてストーリーを組み立て、要所要所は記者が書いてしまうよりは専門家が提起することで説得力をもたせようという狙いというところでしょう。私もかつては同じ活字メディアにおりましたので、記事の構成上、専門家のコメントを引用させていただきながら問題を提起する手法については理解はできます。ある程度の時間やりとりした話し言葉のエッセンスを抽出し、記事の限られたスペースに落とし込んでいく範囲のことなら必要な作業だし、その過程で多少筆が滑ったのならまだ笑って許せる範囲なんですがね。
しかし、ここまで加筆されてしまうと、過激なことを言う部分のリスクを私のような無名の“専門家”に押し付けてしまうというところでしょうか。なお、ビジネス的観点からネットとテレビの相性に触れた、記事の最終ページのコメントは2度目の電話取材でのやりとりで話したことをほぼ正確にまとめておりました。記者の方がその気になればちゃんとした記事を書けるという能力があることだけは察しました。
それにしても、この前、初めてテレビに出たかと思ったら、このザマということで、もうテレビ局に呼ばれなくなるかもしれません。ミーハー的な意味合いで残念という思いよりも、私自身や私の考え方を、ネット記事を読まない、たくさんの人(特に中高年)に知っていただくツールとしてテレビの影響力、戦略的価値を改めて実感したところで、あれまー、というところです。
もちろん、テレビ業界を始めとする既存メディアの問題点は、私もそれなりに知っていますし、指摘すべきときは指摘してきましたが、そこは是々非々であり、ケース・バイ・ケース。先日お呼びいただいたフジの「みんなのニュース」のスタッフ、伊藤アナら出演者の皆さんは本当に段取りが丁寧で感銘を受けました。膨大な人出と時間、お金を投下してのコンテンツ制作はネットメディアにはまだまだ及ばないところで、私も新しい勉強の機会を得ただけに、今回の記事の件は残念でございました。あー、高すぎる授業料になってしまった(汗)ではでは。
新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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