副作用も中毒性もない「賢くなる薬」とは

人類と「薬物」との関係は歴史が長い。ケン・ラッセル監督の映画『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』(1980年)では、主人公がメキシコの先住民から幻覚キノコを手に入れ、アイソレーション・タンクと呼ばれる感覚遮断カプセル装置の中で生命の歴史をトレースした。松本清張の小説『火の路』には、斉明天皇の時代に日本へ入ってきた(という設定の)古代ゾロアスター教の幻覚酒が出てくる。

合成化合物によるLSD様の薬物の開発は、20世紀半ばから積極的に始まった。これも基本となったのは、新大陸の先住民が使用していた幻覚キノコなどだ。インドネシア・バリ島のマジックマッシュルームもLSD系の幻覚をもたらすことで知られている。こうした「薬物」で人間の知能や感覚、思考などを「拡張」させよう、という試みの歴史も浅くはない。

表題の記事では、ナルコレプシー(narcolepsy)の治療薬として開発されたモダフィニル(modafinil)が、世界で初めての「賢くなる薬(smart drug)」だ、と紹介している。副作用も中毒性もなく、頭がすっきりして「覚醒」し、記憶力や学習能力が増加するらしい。モダフィニルは中枢系へ作用せず、大脳皮質などへ働きかける。

「賢くなる」とは本当だろうか。欧米ではこの薬に対する「過信」があるようだが、こうした記事は、眉につばをつけながら読むの正しいだろう。ちなみにナルコレプシーは一種の睡眠障害で、突発的に眠ってしまう病気だ。『麻雀放浪記』を書いた作家の色川武大(阿佐田哲也)がこの病気で、麻雀をしながら突然、卓の上に突っ伏して眠ってしまったそうだ。

the guardian
Narcolepsy medication modafinil is world’s first safe ‘smart drug’


China Mobile のユーザー数は8億人 : そのビジネス・スケールって知ってますか?
Agile Cat ─ in the cloud
村上龍の小説『希望の国のエクソダス』では、日本円が150円に下落して失業率が7%を超える近未来(小説の中では2002年の設定だが)を描いているが、世界経済が破綻したり持ち直したりするきっかけが中国の人口が発表よりも数億人も少なかったり多かったりする設定になっていた。実際、中国当局の統計というのはあまり当てにできない部分もあるようで、国民の調査が正式に始められた1980年代以前の統計というのは不明な部分がかなりある。この記事では中国の携帯端末のユーザー数をカウントしているが、なにしろ桁が違うのでちょっとどれくらいのボリューム感か実感がわかない。

The result of progressives’ feelings
WND
カール・マルクスは「宗教はアヘンである」と言ったが、彼は宗教を全否定していたわけではない。歴史的に虐げられてきた民衆にとって宗教は一種の必要悪だった、という程度の批判とされている。ただ、この言葉が一人歩きし、マルクスが信教の自由を否定した、と宣伝されてきた。この記事では、米国における左派と宗教的な考えについて書いているが、米国では常に宗教が社会や政治、哲学などと一緒に語られる。米国大統領は別にキリスト教徒でなくてもなれるが、キリスト教徒の有権者が多いので結果的にそうなってきた。あり得ないことだが、イスラム教徒が有権者でマジョリティになれば、イスラム教徒の米国大統領が誕生するかもしれない。

Indian Couples Tried Positions From The “Kama Sutra” And Failed Adorably
BuzzFeeD
日本版のBuzzFeeDができるようだが、ここの記事のほとんどはこの手のものだ。日本には48手があるが、もともとこれは相撲の技の数だ。四と八は切りがいい数で末広がり、縁起がいいとされ、江戸の町火消しも48組になっている。ただ、現在の相撲の決まり手は82手と言われ、素首落としとか合唱捻りなど、ちょっと耳にしないものもある。カーマスートラはインド版の48手と思われているが、全体は男女の性愛全般について書かれている。ズバリそのものは第二章で、ほかの章は求愛と結婚とか人妻を誘惑する方法とかケシカランことが書かれているらしい。

分散型メディアは未来か?/Vox.com が主張するメディアの選択
藤村厚夫 Media Disruption
その昔『知的生産の技術』という本があって、文系の学生にとって必読の書とか言われていた。この本では京大式カードなるものが紹介されていたわけだが、アナログ時代にはカードで資料を整理する方法というのがあった。漢字トーク時代のMacOSにはハイパーカードというアプリケーションが標準でついていて、これもまたカード型の方法をとっていた。カードの利点の一つは、自在に追加したりアップデートしたり並べ替えたりすることができることだ。この記事ではニュース配信サイト「Vox」の「Brouse card stacks」を紹介している。なぜか懐かしい感じがするインターフェースだ。


アゴラ編集部:石田 雅彦