何をもってしても止めることはできない。それが、今回の最大の問題なのだ。
そもそも、暴落の理由が分からない。それが、まず問題だ。
20世紀のブラックマンデーも同じだが、21世紀、2015年8月24日のブラックマンデーも理由が分からない。
暴落は24日に始まったと言うよりは、その前の週に明らかに始まっていたのだが、それにしても、リーマン破綻、パリバショックのように、明確なきっかけがない。
中国の為替切り下げが理由だと言われているが、そうではない。きっかけとして、あまりに曖昧だ。
第二に、きっかけもわからなければ、真の要因、背景もわからない。
上海株式の暴落が世界に広がった、という見方は明らかに間違いだ。普通の世界同時株安の場合は、一つの市場で損失が出ると、その暴落が伝播するが、その理由は、投資家がその損失を他の市場で保有資産を売却することで埋めたり、ポジションを整理したりすることだが、上海の場合は、ほとんど投資家の保有が孤立している、つまり、中国国内の企業、個人が中心であるから、その実質的な影響はないはずだ。
真の理由は、中国株式市場ではなく、中国実体経済であり、実体経済に大きな影響を与える中国不動産市場だ。
これは、共通している認識だと思うが、しかし、これでも謎は残る。
中国実体経済への不安は、なぜ突然高まったのか。
一応、為替切り下げを見て、そこまで中国経済は悪いのか、と解釈したことになっている。一応の辻褄は合う。しかし、これはあまりにもつじつま合わせだ。
なぜなら、為替切り下げの直後は、その事実は驚きだったが、株価がそれで一本調子で下がったわけではない。為替の切り下げは中国経済にはプラスだ、という評価がむしろ多く、政治的には問題だが、経済にはプラス、という雰囲気だった。しかも、暴落が激しく始まったのは、それから1週間近く経ってからで、タイミング的におかしい。
要は、真の理由は特定できない、ということだ。
だから、昨日夜の中国の金融追加緩和で、一旦大きく戻したものの、それが持続しなかったのも当然だ。
まず、上海市場の株価は全く関係ない。第二に、中国実体経済への刺激策、と言っても、それが実際に中国の実体経済の成長鈍化を止めることができるなら別だが、対策をとる、という程度では大勢に影響はない。だから、効果はないはずだ。
上海の株価に注目しているのは、皆が注目しているから注目なだけであって、上海が大きく下がれば、下げ方向の仕掛けがしやすくなるだけで、上がれば、反転の仕掛けがしやすくなるだけだ。
すなわち、今回の世界株価暴落は、20世紀のブラックマンデー、21世紀のブラックマンデーともに、理由はないのだ。
そして、これは何ら特殊なことではなく、多くの暴落がきっかけがないし、明らかな理由はないのだ。
これがバブルの本質だ。
つまり、唯一共通しているのは、バブルになっていて、いつはじけてもおかしくない状況になっていた、ということに尽きる。
そして、バブルになっているとは、水準は関係ない。高すぎるのではなく、皆が買いすぎている、ことだけが問題なのだ。
皆が十分買っていれば、後は売るだけ。そうなると、売るきっかけだけが市場を動かすことになる。
そういう状態だった、ということだ。
そして今回は、やはり、誰かが仕掛けたと思う。
米国投資家達の夏休み、取引の一番薄いところと狙った。また米国利上げ直前で、しかし、その動きへの思惑の駆け引きが激しくなる、ジャクソンホール前、9月の雇用統計前、ここでは動かないと油断していた隙を突いた、ということだと思う。
ただ、仕掛けにしては、動きが派手すぎで、だからこそ、仕掛けだ、という見方もできるのだが、仕掛けた主体は、かなり大手であり、また、連動して仕掛けてきているはずだ。CTAが今年儲かっていなかったから、儲けるために仕掛けた、という見方もあるが、それに加えて、キーとなる仕掛けの主体がいたと思う。
しかし、その仕掛けに大成功した理由は、CTAのプログラムの反応や、多くのアルゴリズム取引の反応を読む力が優れていたこと、それ以外の投資家心理も的確に捉えていたこと、などが挙げられるが、しかし、これだけ暴落が広がった真の理由は、バブルがピークアウトしかかっていたことに尽きる。
世界中の投資家が、あまりにすべてのものに、おなかいっぱい、投資しすぎていたからだ。
ドルの暴落も、ドルに投機しすぎていたからである。
したがって、この暴落が終わるのは、多くのリスクオンのポジションが調整されない限り終わらないのであって、まだ残っていれば、毎日、それをはき出させるために、乱高下が起こされ、そして、この乱高下は、一旦投げ売り、ポジション整理が始まると、自律的に続くから、もはや、大規模火災のように、消火は無理で、燃えるものがなくなるまで続くだろう。
そして、本当に恐怖なのは、唯一のまともな暴落の背景的な理由が、中国実体経済の減速、新興国実体経済の低迷であり、これは実在する問題であり、何をどうやっても、長期に続いてきた高成長が転換する時には避けられないものであり、これまでの世界経済が受けた恩恵の対価としては、むしろ少なすぎるぐらいであるが、調整のコストはかかり、長引くのである。
したがって、短期に、バブルが崩壊し、森林と資金、いやなによりもリスクテイクセンチメントが燃え尽きたとしても、中長期に継続する。つまり、長期的な上昇基調への回復はあり得ない、ということだ。
短期には、燃え尽きるのを待つ。
長期には、誠実に、実体経済の長期成長力を上げる。金融政策でも財政政策でもない。経済の自律回復、それも、長期の新しい時代への移行を待つしかないのだ。