続・週刊誌のコメント編集はどこまで許されるのか?

どうも新田です。先日のブログで、お盆休み前の8月10日に発売された週刊ポスト(15年8月21・28日合併号)の「フジテレビがソフトバンクに買収される日」に掲載された私のコメントが編集部による大幅加筆があり、私が取材時にしゃべったのとは違うニュアンスや、明らかに私からは提起していない文言が出てしまった件についてお伝えしたところでした。本日はその後の顛末も含めて続編です。



■週刊ポストに訂正申し入れも…
さすがに私も頭に来たので発売当日、週刊ポスト編集部サイドに対して抗議を申し入れ、その後、8月14日に取材したK記者と担当デスクのSさんと六本木のカフェで面会。その翌週22日に今度はSさんと上司にあたる副編集長のNさんと同じ場所で再び面談し、先日のブログで書いたような発言の相違と、訂正記事の申し入れをいたしました。それでまあ、結局、編集部に持ち帰って検討された結果が24日、私の携帯にNさんが直接かけてこられまして、訂正記事の申し入れについては「過去の掲載例と比べても今回は出せない」と受け付けてもらえず(汗)ただ、その代わりに、お詫びの文書を頂戴しました。

主なポイントを抜粋すると……。

取材時に新田様から伺った内容を踏まえ、取材記者、担当編集とで新田さんのご発言の趣旨から逸脱しないように記事にまとめたつもりでしたが、結果的に、新田様とお考えとは異なるコメントであるとのご指摘を頂くことになったことは誠に遺憾に存じます。

ふむふむ。それで?

本来ならば、企画趣旨を丁寧にお伝えし、ご納得頂いたうえでお話しくださった内容を正確に記事化すべきでしたが、その点が不十分であったことは誠に申し訳ありません。また、ゲラをご確認頂くことで、新田様と編集部側との認識のずれを修正できたはずであり、その機会を設けなかったことをお詫び致します。

うん、この内容は、Nさんと直接お会いしたときもお聞きしました。ゲラチェックを始めとした確認作業が不十分だった点についてはNさんは「100%こちらが悪い」ということでお認めになりましたが、謝り方としては、なかなか“上手”ではないかと思うわけです。

■訂正記事を出さずに“上手”に謝るには
ぶっちゃけ、これを読んで「ポストが謝っているんだからいいんじゃないか」という方がいらっしゃったら、きっと人がいいと思います。総理の戦後70年談話でも戦時中のくだりで主語をぼやかし、さりげなく強い未来志向を織り込んでいましたが、組織見解の文書というのは、時に訴訟での証拠にもなりかねませんので、コンテクストの折り込み方は、ある種、腕の見せ所なわけです。

今後、私と同じように週刊誌とトラブる方のご参考になるように、一つ申し上げますと、この内容は、一見、全面的に謝っているように見えて、あくまで100%の瑕疵があったのは取材過程ならびに編集過程というところに、焦点を絞っているわけですね。訂正記事を載せると、程度の差はあれ、中身について問題があったと認めるわけです。結局、訂正記事に応じていないというのは、やはり企画の根幹に関わる最後の一線だけは守りたいというのが本音だと思います。

とはいえ、まー、私もかつては訂正記事を出しかねない側にいましたから、紙面が傷つかないようにギリギリまで調整して、落とし所をなんとか探ろうとするN副編集長の調整努力については認めましょう。ただですね、直接お会いした時も申し上げたように、ポストさん、記事の出し方について本当に評判悪いです。

前回の私の記事が出てから、池田信夫さん始め、私のところにはお見舞いやら冷やかしやらで「私もやられた」という被害報告が続々と手元に入っております。ほかにもテレビや電波絡みの話で「違う趣旨でコメントが載った」という大学の先生もおりましたし、別件で誤報を書かれた企業の関係者からは、訂正記事は出してもらったものの、「埋没感満載で訂正されてもねー」と苦笑されておりました。

■週刊誌だって“監視”される時代
そういえば、本日は文春に金銭トラブルをすっぱ抜かれた武藤議員が釈明の記者会見を開いたはいいものの、記者クラブ加盟社以外の記者をパージしてトラブったそうですね。週刊誌は、スキャンダルや不祥事を追求する相手といくらでもガチンコでバトるのは大いに結構だと思いますが、企画の趣旨や方向性に賛同する専門家と余計なトラブルを起こしているようだと本当にもったいないと思うんですけどね。

週刊誌は新聞が書けないことを書く、ジャーナリズムの世界で「最終兵器」的なところがあるわけで、私も新聞社出身の割にはそれなりにリスペクトはしてきました。しかし週刊誌自身の問題になると、かつては同業ライバル誌を含めてどこも書くことはなかったわけですが、ネット時代になると、こういう感じである程度の可視化が進んでしまいます。この前も私がポストの編集長再交代の話を書いたのがきっかけかはわかりませんが、その後、ネットメディアのリテラが取材をかけたらしく、前編集長が1年で異例の復帰を果たした背景に「官邸の圧力」があったとする説を唱えてネット上で話題になりました。

まー、さすがにそれは穿ち過ぎのようにも思いますが、いずれにせよ、権力を監視する週刊誌も「監視される」時代になったのだと、今回、私が身を切って皆さんにお知らせすることになろうとは。。。現場からは以上です。あー、フジテレビさん、まだ怒っているかな。関係者にメールしたけど、返信がないや。。。(汗)ではでは。
新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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