日本が抱えている借金は1000兆円の大台に乗っています。歳出の増加、社会保険費の国庫負担についても1兆円のペースで増え続けているため健全なプライマリー・バランスには程遠い状態です。
このままではハイパーインフレになり資産は失われて企業がドンドン倒産して銀行も破綻。国民が路頭に迷う危険性があるので消費税率を世界最高レベルに上げなければいけないと主張する経済学者もいます。
デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの北欧三国は消費税(現在は世界最高レベルの25%)が高負担である反面、高い社会保障が定着しています。日本でこの税率を上回ることがあれば間違いなく消費が減退し破綻を招きます。国債償還の懸念はありませんからハイパーインフレの到来もあまり現実的ではありません。単に危機感を煽っているだけに聞こえます。
財政が破綻するということは国として借金の返済ができなくなることです。1980年台から大蔵省(現財務省)は財政破綻の危機を言いはじめて既に30余年が経とうとしていますが予想に反して日本経済は未だ破綻に至っていません。消費増税議論が盛んになると財政破綻論を持ち出す経済学者が必ず出現してきますがミスリードをしているだけです。
●企業の業況は?
企業の業況はどうでしょうか。前回の日銀短観について新聞各紙は「大企業製造業の景況感が上昇」と、概ね好意的に受け止めてました。短観は企業の規模別、製造業/非製造業の業種別にアンケートが実施されることから業況判断が分かり易いとされています。
大企業に関しては、3月対比で見ると変化幅が+3(製造業)+4(非製造業)ですから改善しているといえます。ところが先行きの視点で対比をすると、企業の規模(大企業、中堅企業、中小企業)及び製造業、非製造業のいずれもが、現状維持か悲観的な見方をしています。これは調査結果の、「さほど良くない」「悪い」を足したものを、比較するとより鮮明になります。日本の経営者の多くは景気の先行きに不安を感じていることのあらわれです。
圧倒的に多いのは「さほど良くない」の回答です。「さほど良くない」「悪い」を合わせると、製造業では大企業85%、中小企業86%、非製造業では大企業81%、中小企業84%にものぼります。つまり「経営者の多くは景気の先行きについてネガティブに判断している」ということです。また、輸出企業以外は円安の恩恵を受けられていません。6/29の日本経済新聞では「景気回復を実感していない」が75%にのぼり、「実感している」の18%を大きく上回っています。これが感覚値ではないかと思います。新聞各紙やメディアの報道はミスリードにしか思えません。
3月短観の際にも、新聞の見出しは「景況感が大幅に改善」といわれましたが、ほとんどの指数がマイナスでした。内閣府が発表した8月の景気ウオッチャー調査は2ヶ月ぶりに悪化しています。ところが景気の基調判断は不思議なことに「緩やかな回復基調が続いている」に据え置かれています。10月初旬に発表される短観に注目が集まりそうです。
●尾藤克之
ジャーナリスト/経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業の役員等を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)、『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など。
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