アメリカの金利は何時上がるのか?

一昨日、このブログで「アメリカの金利は上がるのか?」というテーマをカバーさせて頂いたのですが、今日はFOMCを受けて「アメリカの金利は何時上がるのか?」というテーマで書かせて頂きます。

既にご承知の通り、アメリカの連邦公開市場委員会において本日、金利の据え置きを発表しました。大方の市場予想通りとなりましたが、エコノミストの間では予想は半々に割れていました。注目された声明ですが、基本的にdovishな(ハト派=弱気)トーン満載であります。

悪く言えばイエレン議長は金利を上げない理由を探し出し、それをテーブルに乗せ、「これだけある金利を上げられない理由」の理論展開をしてしまった気がします。第一報を聞いた際は当面利上げする理由がもはや、存在しないのではないか、と思ったぐらいです。特にそれまであれだけこだわっていた雇用についてはサイドラインに置き、インフレが十分でないこと、そして、世界を取り巻く経済環境が悪化していることを利上げできない最大の理由としました。

この二つの理由づけはアメリカの連邦準備理事会の能力を超えており、彼らにとって「対応できない外的要因」であることを強調したようにもみえます。それを裏付けるものとして利上げ据え置きの判断は委員10人のうち9名に上っています。タカ派がその爪を隠したともいえます。勿論、そうなる伏線はIMFや世界銀行からのプレッシャーもあり、基軸通貨ドルが与える世界経済への影響を真摯に受け止め、判断材料にした、とも言えます。

では、利上げはいつになるか、ですが、インフレ率が2%を見通せる安定的確証が十分ではないという今回の判断を尊重するなら次回のFOMCまでにそれが十分に回復するということは論理的にも物理的にもあり得ません。(9月はすでに半分終わっていますが、急激なインフレになる兆候は全くありません。)よって、利上げは最速で12月とみるべきでしょう。

一部のアナリストは既に見直し作業にかかっているようですが、今年はなくて来年の第一四半期という声も増えてきています。インフレ率については一昨日記載したようにいざ、利上げする際には「十分に低かった金利の上澄みの調整」という言い訳ができると考えています。よって、世界経済がそれまでに落ち着きを取り戻し、アメリカの利上げに対する準備ができているか、がもっと重要なキーになると思います。

97年から99年のアジアショックのような事態を引き起こさないよう新興国は十分で周到な準備を進めていると思いますが、最大のキーは中国の景気が一定の安定感を取り戻し、資源価格の回復に繋がるかが最大の指標になると考えています。

すなわち、金銀銅、及び原油相場がこれから数か月の間にどのように推移するのか、これがアメリカの利上げの行方を決定づけるファクターになるとみています。OECDはカナダとオーストラリアに対して資源偏重の国家だけに資源価格の回復がないと非常に厳しい経済環境になるとレポートしています。同様のことはブラジルや南アフリカをはじめ、多くの国に言えるわけで逆に言えば世界経済がここまで資源価格に振り回されている、とも言えそうです。

以前にも申し上げましたが金利は下げるバイアスと上げるバイアスでは全然違います。そしてこれだけ長く金融緩和でぬるま湯に浸かっていると利上げのハードルは異様に高くなります。事実、日本はほとんどそれに成功していません。アメリカも長期的に見て利上げしたとしても僅かなものに留まると考えています。それは成熟経済国家の性でもあるのです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 9月18日付より