日本人二人(うち一人は北朝鮮脱北者で日本国籍取得者とされる)が中国でスパイ容疑で逮捕されたそうです。それぞれ遼寧省の中朝国境地帯と浙江省の軍事関連施設の周辺で拘束された(日経)とのことですが、個人的直感からするといわゆる「プロのスパイ」ではないと考えています。
軍事施設への立ち入りは知らぬ間に入っている場合か意図的であったとしても興味本位ではないでしょうか?日本は国外での諜報活動は表向き行なっていないとされますが、万が一、やっているとしてもその程度で捕まるほどレベルは低くないはずです。せいぜいジャーナリストや情報屋と称する人の無理な行動だったのではないかと考えています。
日本の諜報活動は戦前に盛んでありました。特に陸軍中野学校が著名です。今、中野駅北口の再開発が注目されていますがまさにあの地にその中野学校がありました。その中でも能力によりクラス分けされており、トップクラスとそうでないクラスは相当の差があったとされています。(キャリアとノンキャリの違いぐらいでしょうか?例えばルパングから帰国した小野田さんは「キャリア」ではありません。)中野学校の卒業生はその身分を明かさないルールとなっているため、いまだによくは分かりませんが相当しっかりした横のつながりはあるようです。また終戦後も北朝鮮や東南アジアに残って諜報を続けた部隊も数多く、小説のような話もあるように聞いています。
また、日本を舞台にしたスパイが大きく話題になったのがゾルゲ事件でしょう。尾崎秀美(おざきほつみ)が戦前、朝日新聞社員として西園寺公一との接点を通じてのちの首相、近衛文麿が実質的に仕切る昭和研究会に入り込み、トップレベルの秘匿事項を掌握していたとされる極めて大きな事件であります。
一般の方にとってもっとも親しみのあるスパイとは映画の「007」ではないでしょうか?あれはイギリスの秘密情報部MI6の工作官の物語で原作のイアン・フレミング氏はその諜報部員だったとされます。あるいはロシアのプーチン大統領はソ連諜報部である国家保安委員会(KGB)出身です。世界各国諜報部署のない国はないと言っても良く、問題はどの程度その活動を進めているかのレベルの問題でしょう。
アメリカによる盗聴事件がヨーロッパや日本で発覚しましたし、先日は安倍首相が国連出席のため、ニューヨークに滞在するにあたり、定宿とされていたウォルドーフ アストリアが中国企業に買収された為、盗聴などを恐れキタノホテルに変わっています。
こうやって見ると諜報やその活動はそれなりにあると考えてもよく、誰がどこで何をやっているかわからないというのが実態であります。そして諜報は本来、もっと奥底まで入り込み、一般人ですら知らない事実を掴むことに意味があります。よってたかが軍事設備や国境近くに入り込んだぐらいで捕まる間抜けなプロのスパイはまずないとみてよいと思います。
中国の件に限って言えば菅官房長官が「(日本国家がそのような行為をしたことは)絶対にしていない」と断言していますが、それはこの拘束された二人を主語としているわけでその点は本当ではないでしょうか。但し日本には「情報機関」として内閣情報調査室(内調)、警察警備局(公安)の他に外務省、防衛省、法務省などで部署があるほか、一部出先機関では兼務的要素もあるとされています。
今時、性善説をとるようなお人好しな国はなく、常に裏がある、と考えるのが国家と国家の関係でしょう。残念ながらスパイという世界は決して綺麗な話ではありませんが、廃れることもまずない世界であると言えそうです。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月1日付より