真の分散投資の意味

そもそも、分散投資の分散効果とは何か。よくリスク分散などというが、リスク分散とは何か。もっと遡っていえば、リスクとは何か。極限まで遡れば、資産とは何か、投資とは何か。


投資というのは、価値のある資産を保有することである。価値のある資産を保有すれば、資産に内包された価値は、時間の展開に従い、実現してくる。資産が本源的に生成する収益を受け取ること、これに、投資の根本原理は尽きる。

本源的収益を受け取る形態としては、利息配当金が一番わかりやすい。だから、本源的収益をインカムと呼んでおこう。資産価値とは、インカムの現在価値である。

リスクとは、資産がもつ本源的収益を生む力の変動である。しかも、投資においては、損失が問題だから、リスクとは、資産がもつ本源的収益を生む力の低下である。

価値が低下すれば、価格も低下する。価値と価格は、理念的に一致する。しかし、価値が変わらなくとも、価格は勝手に変化することがある。価格は、価値の周辺で、常時変動する。

価格の変動を、ボラティリティと呼ぼう。ボラティリティは、収益を生まないランダムな攪乱にすぎない。故に、投資の本質には影響を与えない。

ところが、一時的な価格の下落も、表面的には損失になるので、人間社会の制約条件のなかでは、問題になることがある。だから、ボラティリティは小さいことが望ましい。

そこで、一つの工夫として、ボラティリティのパタンの異なる資産を組み合わせることで、相互の価格変動を相殺させて、合計としての総資産全体のボラティリティを小さくできないかと考える。かくして、分散投資による全体ボラティリティの削減が志向される、このことを、通常、リスク分散と呼んでいるのだ。

分散投資とは、以上の論理のように、ボラティリティの削減という価格に着目した方向が基本なのだが、他方で、インカムの源泉の多様化という価値に着目した方向もあるはずである。実は、インカム源泉の多様化こそが、本当のリスク分散なのではないのか。なぜなら、インカム源泉とは、資産の価値のことであり、リスクとは、その価値の毀損だからである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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