じいさん、ばあさんを学校の補助教員に

前回のブログで「教育の現場に権限を委譲すれば、責任も発生する。その結果、いじめ自殺が発生すれば、辞任、俸給削減などの責任をとってもらうしかない」と書いた。

いじめがあると知りながら何もせず、見殺しにした教師などは厳しく罰する必要がると思うからだ。中にはいじめている生徒側に立って、実質上教師もいじめに加担する場合があると聞く。

そういう人間に教師の資格はない。ただ、実際には「まさか自殺に追い込まれているまで、いじめが深刻化しているとは思わなかった。本当にわからなかった」というまじめな教師の方が多いだろう。

教師はクラスに40人前後の生徒を抱えている。授業、テストとその採点、遠足や運動会の準備、放課後の活動指導、保護者への連絡や校長、指導主任、教育委員会への報告レポート作成……と先生のやることは数多い。すべての生徒の動向に、きめ細かく目を行き届かせるのは困難だ。

最近は子供を甘やかすだけ甘やかし、担任教師がちょっとその子のわがままを注意しただけで学校にどなりこんで来るモンスター・ペアレントも増えたので、その対応も大変だ。

私は子供を守る最大の責任者は親だと思う。自分の子供がいじめられていないか否か、日々、何気なく観察して「元気が無くなった」「寡黙になった」など小さな変化からいじめを察知し、学校に連絡するなど子供をいじめや自殺から守るのは親の役目である。子供に何かあったら、親が一番批判されてしかるべきだ。教師に負担を押し付けることは許されない。

ただ、無責任な教師や校長しかいない学校では、親がいくら子供のいじめについて訴え、問題の改善を頼んでも何もしてくれないことも多い。その際は教育委員会や児童相談所、警察などに積極的に相談する。いじめている子供(加害者)の親の家にも乗り込んで談判する。

それでも拉致があかなければ、次善、三善の策として子供を転校させる。どの学校でもいじめられるようなら、不登校にさせてもいい。不登校者ばかり集めた特別の学校や塾もあるから、そこに入れる方法もある。

図書館やインターネットが発達している今、学校に行かなくても、親が適切に教えれば、基礎的な学問は十分学べる。自分の子供である。最後に守るのは親しかいないと考えたい。

ところが、昨今はこの親の役目を果たしていない例が少なくない。共稼ぎや離婚の増加もあって親が子供をほったらかし、子供をほとんど見ていないのだ。無責任である。いや責任感も愛情もあるのだが、離婚して一人親となり、生活が苦しく、長時間労働のため、見たくても見られないという貧困家庭もある。

両親とも気が弱く、情報も収入も乏しく、子供にいじめの災難が起こってもどうしていいかわからず、おろおろしているだけという気の毒な家庭もある。また、そういう家庭の子供がいじめられやすいというのが現実だ。

近所付き合いが盛んだった昔は、だれかが子供の動向を監視して、世話好きのおばさんや腕っぷしの強いおじさんがいじめている子供を助ける、ということも期待できた。

しかし、「隣は何をする人ぞ」の没交渉社会の今、それはあまり期待できない。

一つの解決法として、クラスに教師の補助を置くのがいいのではないだろうか。

定年退職者やその妻など、60-80歳代で元気が良く、子供が大好きというじいさん、ばあさんが適任だ。

教室の後ろにいて、子供が歩き出すなど学級崩壊の危険があれば、教師と一緒になって、その生徒が着席するように世話する。授業についていけない生徒の横に座って、わかりやすく教える。

授業内容は事前に教諭から知らせてもらい、どこがポイントかも伝えてもらう。
そして、休み時間や放課後に子供と一緒に遊びつつ、いじめが発生しないかについて目を凝らす。そこにじいさん、ばあさんがいるだけでいじめは激減すると思うが、発生したら止めに入る。

1人、そういう補助がいれば、ずいぶん楽になると思うが、学級崩壊などが発生しているクラスでは一時的に補助要員を2人、3人と増やしてもよい。

補助教員を依頼するか否かは担任教師の自由とする。ただ、主任教師や校長との相談の上で行う。授業はすべて教師が主導し、補助教員はその指示に従う。元教師や企業の管理職だったシニアは、上から目線で教師を指導しようとしがちだが、それは厳禁というルールにする。

もっとも、シニアが社会生活や仕事についてベテランの経験者であることは確か。だから、教師は補助教員への敬意を忘れず、いろいろ相談するのは大いに結構。シニアの補助教員もそれを喜び、適切に応えれば、事はうまく運ぶだろう。

ただ60-80代で毎日、精勤するのは体力的に大変だ。学校に赴くのは週2-3回として、何人かが交代勤務とする方が良いだろう。時々全員で会って、教師とともにどの子が問題か、何をすべきかなど、具体的に話し合って情報を共有することが望ましい。

問題が解消されたと単に教師が判断すれば、そこでシニアの補助教員の参加を打ち切る。継続してやりたい補助教員は問題を抱えている別の学校、クラスに移ればよい。

退職後のボランティア活動であり、謝礼はなしか、あっても月1万~2万円程度でいいのではないか。通勤費は支払うが、自宅が近所であることが多いのでその費用はわずかだろう。ただ、小学校なら昼の給食を只で提供、中学校なら昼食代を実費で支払う。

公立学校の場合、以上を実施に移すには様々な規制を改革しなければならない。少ないながら通勤費などの支出もある。面倒をきらい前例踏襲第一のお役所仕事では実施は難しいかも知れない。政府が特区を作って、補助教員制度を認めるのが望ましい。実施した自治体が成功すれば全国に広がるだろう。

以上はシニアの活性化を促し、教師や親の負担を減らすことで日本経済の活性化と生産性の向上にも資するだろう。