巨人・福田投手はギャンブル依存症なのか?

どうも新田です。夜はすっかり肌寒くなり、気がつけばプロ野球も今夜の広島-中日戦でレギュラーシーズン終了です。これからCS→日本シリーズ、そして11月には初開催の国際大会プレミア12と球界的にはヤマ場を迎えていこうという中で、巨人・福田投手の野球賭博問題が影を落としております。



実は記者2年目、和歌山で勤務していた折、福田投手が伊都高校のエースとしてプロに注目されて試合も取材したことがあるだけに、その後の活躍を陰ながら嬉しく思っておりました。それだけに残念です。

■国立競技場、新聞業界に影響も
それにしてもタイミングがあまりに悪すぎました。折しもサッカーくじと同じ形式でプロ野球も新たに導入するか検討していた矢先ですが、かつて「黒い霧事件」という選手たちによる八百長事件の古傷の痛みを思い起こさせ、五輪相の遠藤センセは記者会見で早々に撤退宣言をせざるを得ませんでした。野球くじは、財政難の我が国が新国立競技場の建設費を自助努力で賄う上で有望な方策だったわけですが、思い切りアテが外れまして、政権側としてはカンカンでしょうし、読売グループとしても安倍政権に対して「借り」を作ったことが新聞業界的に影響するのかどうか時節柄、センシティブな局面もいろいろ可能性としてはあり得そうです。

しかしこれも野球の神様の思し召しかもしれません。巨人人気が衰えたとはいえ、いまもなお一軍半クラスの選手にすら、今回のように胡散臭い輩が付きまとってくるリスクが顕在化したわけで、反社会的勢力からつけ込まれて平成版・黒い霧事件が将来的に起きる可能性はあったと考えざるを得ません。球界としては国に対して、肉を切らせて骨を断つ形で野球くじのことは一度白紙に戻す大義名分を得たと見ることもできそうです。

■「ギャンブル依存症」という当事者視点
マクロなことを徒然と書いてきましたが、球界が本質的に再発防止をできるかどうかやや懸念もあります。野球協約上、福田投手の永久追放は免れそうにありませんが、「トカゲの尻尾切り」的な幕引きでは、本質的なリスクヘッジと言えるのか微妙なところです。人間関係に気をつけるようにだとかの教育的指導も重要ですが、ギャンブルになぜハマってしまうのか、当事者視点での検証が欠かせないのではないでしょうか。

「ギャンブルにハマる輩はお金がなくて一発逆転を夢見ているから」的な認識がかつてはあったわけですが、大王製紙会社の元会長が100億円をカジノですった事例が典型的で所得に関係なく、賭け事そのものにスリルを覚えて病みつきになるパーソナルな要因があることに注目が集まっています。いわゆる「ギャンブル依存症」です。元会長自身も自身がそうであると法廷で告白したそうですが、福田投手も昨年の契約更改で23%ダウンの大幅減俸だったとはいえ、今季も2400万円(推定)と一般人より大幅に所得があったわけで、彼も依存症患者だった疑いがあります。

■医療的視点でも検証を
私も昨年、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」のシンポジウム開催の広報をお手伝いするまで、この病気のことを全く知らなかったのですが、厚労省推計でも536万人もいるとされており、この数字については統計的な異論もあるものの、社会の一定数が病的にギャンブルで身を持ち崩してしまう人がいることを突きつけたのは確かです。ちなみに、私はまだ読みきれてないのですが、考える会の田中さんが当事者体験を基に角川から新書を出しております。

田中 紀子
KADOKAWA/角川書店
2015-09-09


過去の膨大な報道記事調査を基に360件の重大刑事事件で依存症が理由だったことを突き止めた労作であり、この問題が社会病理として非常に根深いことを知っていただければと思います。

「依存症」という視点は黒い霧事件の時代にはなかったわけですが、当該球団の巨人軍だけではなく、NPBとしても法的アプローチだけでなく、医療的視点でも検証を進めていただき、再発防止策を進めていただけるよう願ってやみません。ではでは。

新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
個人ブログ
ツイッター
第4回「佐々木俊尚、渡邉正裕両氏に“煽られる”」(バナーをクリック)