ところが憲法第9条には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と書いてあるのです。自衛隊はだれが見ても戦力だし、安保条約は軍事同盟です。それにもとづいて日本国内には米軍基地がたくさんあります。今の状態が憲法第9条に違反することは明らかです。
それでも実質的に現状を「解釈改憲」として認めるのなら、わざわざ改正する必要もないのですが、今年の国会では野党が途中から「集団的自衛権の行使は憲法違反だ」と騒ぎ始めました。自衛隊は憲法違反の軍隊なんだから、それを海外派兵するのは憲法違反に決まっています。
だから共産党は安保法案に反対するなら、党の綱領に従って「安保条約を破棄して自衛隊を解散しろ」というべきだったのです。それができない理由は明らかです。志位さんでさえ、そんなことができるとは思っていないからです。
北朝鮮には頭のおかしい指導者がいて数百発のミサイルをもっています。自衛隊も米軍基地もなくなったら、ミサイルが飛んできても国民の命は守れません。記者会見で「有事が起きたら、自衛隊と在日米軍の出動を要請するのか」という質問に対して、志位さんは「自衛隊法がある以上、有事の時に自衛隊を活用するのは当然のことです」と答えました。
要するに共産党でさえ、憲法違反の「戦力」を使うのはしょうがないと思っているわけです。ここまで与野党が一致して憲法と矛盾した話をしているのは、普通ではありません。これでは共産党のいう「立憲主義」(憲法にもとづいて政治を行なうこと)が空洞化してしまいます。
これを改正しないことが「歯止め」だというのは理屈になりません。昔アメリカでは「禁酒法」という法律をつくりましたが、非合法で酒をつくるシカゴのギャングがもうかっただけでした。あるものを「ない」と定めた法律は、歯止めにはならないのです。
自衛隊の活動に歯止めをかけたいのなら、それを軍隊として憲法で認めた上で、具体的にどういう活動を禁止するのか法律で決めるべきです。今は自衛隊は軍隊ではないので、戦争で敵を殺したら、殺人罪で起訴されます。こんな状態で国を守ることはできません。
憲法改正というと「押しつけ憲法はけしからん」という人がいて、全面的に改正して明治憲法に戻そうみたいな話が出てきますが、こういう話に共感する人は、今ではほとんどいません。第9条だけなら、すべての会派がおかしいと認めたのだから、衆参両院の2/3以上で改正が発議できるでしょう。
今のまま戦争になると、震災のときのような大混乱になります。戦争が近づいてから憲法論議をするわけにはいかないので、それほど危険の切迫していない今のうちに、安倍首相も改正の問題提起ぐらいしてはどうでしょうか。