通帳分捕りで維新大炎上。橋下さんのキレMAXに

どうも新田です。その昔、博報堂に勤める学生時代の友達が「金を貸してくれよ」と無心しに来たのでキャバクラか風俗で浪費したのかと心配したら、嫁に通帳も印鑑も握られて、誕生日プレゼントも買えないということで1万円ほど貸し付けて差し上げました。やはり世の中、通帳と印鑑を握る人は強いです。しかし、一体なんですか、これは。


金庫free

維新、交付金振込先の口座取り合い 議員が通帳をガード(15年10月17日・朝日新聞デジタル
「維新・本家」を自認する橋下徹・大阪市長が立ち上げる新党への合流組が、維新の党執行部による除籍処分に対抗し、反撃に転じている。党本部が大阪にあることから、政党交付金が振り込まれる口座の通帳や印鑑を確保。態度未定の中間派を取り込んだ形勢逆転をねらっている。

…(中略)…党本部が大阪にあることも活用。新党組の議員が待機し、党の通帳などを管理している。執行部側の松木謙公幹事長代行が16日に本部を訪れ、党名義の口座の通帳と印鑑を引き渡すよう求めたが、新党組の井上英孝衆院議員らが拒否した。10、12月分の政党交付金13億円は、この口座に振り込まれる。執行部は登録している実印の変更で対抗しようとしているが、橋下氏は「ヤミ金融屋とおんなじことをやっている」と批判した。

個人のお小遣いの問題ならともかく、大の政党の大の大人たち(しかも公人)が通帳と印鑑の分捕り合戦をして、しかも対象となっているのが政党交付金、つまり私たちの税金というのなら次元が違うわけですね。

■事態をみかねた松田公太氏から「正論」
さすがに、他の党からも「おい、おい」という意見が出始めまして、松田公太さんが先日アゴラに寄稿されたブログでご指摘が。

取り合っているその金は自分たちのものでもなく、国民の金です(次の助成金が振り込まれるのは10月20日です。維新は年間26億円)。既に使い道が決まっていたり、何かで契約をしてしまった分は仕方が無いかもしれません(各国会議員も何かしらあるでしょう)。

私が約1年前、「みんなの党は解党しかない」との考えに至り、有志を結集して推進し、実現にもって行った時は、正直怖かったです。解党をして政党助成金を返納するというのは日本憲政史上初の試みでしたし、一部の国会議員や関係者たちから凄まじい批判と脅しを受けたりしました。

通帳や印鑑の取り合いなど、情けない姿をこれ以上国民に見せるのをやめて頂きたい。国民の政治家への不信を増幅させるだけです。同じ国会議員として、多くは以前一緒の政党にいた同僚として、金を取り合う姿はあまりにも悲しいものです。

憲政史上初の解党返納をした解党時の当事者だけに、タリーズ党の支持層ならずとも「正論」でしょうね。一方、維新の党としては「創業者」である橋下さん、松井さんがいなくなった時点で、党の存在意義はなくなったに等しいわけだから、ここはもう一度全てをバラしてお互いに別々の政党をゼロから作り直す、あるいは残った「松野組」は民主党に合流した新党として交付金をもらうのが筋じゃないでしょうかね。

さて、どうなるやらと思っていたところ、橋下さんが今日になってこんなツイートを連発し始めました。

■脊髄反射ぶりは健在
橋下さんが松田さんのブログを見たかはわかりませんが、「みんなの党の先例」を持ち出しているあたり、少なくともニュアンスは伝わってもおかしくありません。たしかにクリティカルヒットだったと思いますよ。メディアの論調も追随しかねないところで、昨日まで「分捕り合戦」状態になっていたところの急激な路線転換するあたり、民意を敏感に感じ取り「君子は豹変する」橋下スタイルの脊髄反射ぶりは健在のようです。

しかしその背景を考えると、世論調査で、維新の党の支持率が急落しております。NHK調査では、8月(2.5%)→9月(1.3%)→10月(0.7%)てな具合。この数字は厳密には、橋下さんたちの「おおさか維新」は入っていないものの、党分裂のゴタゴタで世間のイメージ的には密接していると解釈するのが妥当であり(※追記②一部訂正あり)、ダブル選挙も知事選に平松さんが出ず、相手陣営が再び自民から共産まで野合する動きをみせており、予断を許さない状況です。

■またも“キレ芸”は奏功するのか?
過去にも橋下さんは土俵際に追い込まれると、ある種の“キレ芸”を披露して形勢逆転を図ってきました。知事時代に補助金削減を要求した市長会で泣いてみせたり、衆院選最終日の街頭演説で「もう与党の勝ちですよ」とぶっちゃけたりして結果奏功してきたわけですが、今回の「解党→全額返還」論もその一環で(戦略的に)プッツンしたようにも見受けます。大阪人はキレ芸が好きなのでウケてきましたが、その効果のほどはどうなんでしょうか。

個人的には、党を割り始めてからの橋下さんについて、枚方市長選、東大阪市議選でしっかり結果を残したあたり、さすがだと見直していたんですよ。住民投票で敗れたとはいえ、選挙組織がむしろ大阪府内では最強クラスの団結力を得たと思っていたのですが、ここからどのように仕切り直していくのか、ダブル選挙はますます面白くなってきたと思います。ではでは。

(追記①:18:40)ブログを書いている最中に松田公太さんご本人から、橋下さんの決断を受けて新たにエントリーがあり、ここまでのブログが高いPVを取っていたそうです。やはり有権者の関心度が高そうです。

(追記②:22:30)テレビ朝日の世論調査で「おおさか維新」(橋下新党)の支持率調査が出ていたと知人から指摘あり。これによると、維新の党は2ポイント減の1.6%だったのに対して、おおさか維新は初登場でいきなり2.7%。参考までに公明党が3.4%、社民党が1.6%。いやはや、橋下さんの個人人気の底堅さが改めて伺えるわけですが、それでもカネの問題を引っ張り続けるのはネガティブなことに変わりはありません。ネット上の反響を見ていても、「橋下さんは喧嘩がうまい」(NewsPicksピッカー)と言った声もあり、早いうちに手を打ったこと効果はありそうです。

新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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