パラリンピックを障害者理解の機会とし議論を深めたい

(ボランティア活動に従事する赤澤氏。写真中央)

日本は、障害者に対する理解が欧米諸国と比較すると遅れているといわれます。Charities Aid Foundation(CAF)によると、2012年に世界146カ国の15.5万人を対象に寄付やボランティアに関する調査を行った結果、個人の寄付活動について活発な国を順位別でならべると次のとおりです。

1位オーストラリア、2位アイルランド、3位カナダ、4位ニュージーランド、5位アメリカ。日本は85位で先進国のなかでも最低レベルです。意識を変えるためには啓蒙活動のあり方を根本から考える必要性がありそうです。

今回は、社会福祉の位置づけをより鳥瞰するために、ボランティア活動に取組んでいる現役大学生の赤澤龍之介さん(東京理科大学理学部在学中)に話を伺いました。

●幼少期におけるボランティア体験の重要性

—活動の内容と役割について教えてください。

赤澤龍之介(以下、赤澤) 障害者と健常者が共同生活をする活動に参加しています。参加者は数名のグループにわけられて活動をしますが、今回は10名程度のグループを引率するリーダーとして参加しました。

グループには障害者、健常者、若い中高生のリーダーも大勢います。多くの参加者にボランティアスピリッツを感じてもらうことがリーダーの役割です。今年は長野県の志賀高原で約200名を集めたイベントが開催されました。

—障害者支援の活動をする方に伝えたいことは?

赤澤 多くの学生やボランティアは、イベントに参加するまで、障害者と接したことがありません。イベントに参加しても、慣れない環境もあり戸惑いを隠せない方も少なくありません。障害者とワークに取り組みコミュニケーションをはかることで理解力が深まりますが、障害者を理解する機会は幼少期からあっても良いのではないかと思います。総人口の約6%が障害者といわれていますから、これらの施策を早期から実行することは大切なことです。

●障害者に対する誤った認識を払拭する

—障害者理解を深めるためになにが必要か?

赤澤 障害者に対する理解が乏しいので接し方がわからないことが挙げられます。理解が乏しいので障害者を「気の毒で可哀相」と決めつけてしまいます。これは経験を通じて理解を深めていくしかありません。理解を深められなければ障害者に関連する多くの問題を解決することはできません。

以前、東京都教育委員である、乙武洋匡さんが「24時間テレビを放送するのと、パラリンピックを24時間放送するのと、どちらが障害者理解が進むのか」とつぶやいて話題になったことがあります。障害者理解は簡単ではありませんが、当事者意識を持つことで様々な解釈が出てくるように思います。多くの方が様々な感じ方や解釈をすることは大切だと思います。

また、パラリンピックに向けて障害者が楽しめるスポーツの種目を増やすことも一考です。スポーツが生き甲斐になったり、障害者にとって娯楽やレクリエーションの幅が拡がることは意義のあることだからです。それらの議論を深めるためにパラリンピックに期待されている役割は大きいのだと思います。

—ありがとうございました。

1972年に米国ペンシルバニア州裁判所は「障害の如何を問わず、すべての子供はその能力に応じて教育を受ける権利を有する」(PARC判決)と宣言しています。これは、差別的な教育に対する是正を求めたものであり、教育のダンピング(教育の放棄)を招く危険性があることへの警告です。

内閣府の平成26年度障害者雇用状況によれば日本における障害者数は、身体障害者366.3万人(人口千人当たり29人)、知的障害者54.7万人(同4人)、精神障害者320.1万人(同25人)であり、国民の6%が何らかの障害を有するとしています。障害者政策は私たちにとって喫緊の課題でもあるのです。

尾藤克之
経営コンサルタント/ジャーナリスト