死期を迎えた小惑星からの「伝言」 --- 長谷川 良

欧州のローマ・カトリック教会では1日は「万聖節」(Allerheiligen)」、2日は「死者の日」(Allerseelen)だ。1日を祝日とする国が多い。当方が住むオーストリアでも1日は祝日だが今年は日曜日と重なった。日本のように振り替え休日はないので、国民は一日、休日を失ったわけだ。

同日、教会では死者を祭り、信者たちは花屋さんで花を買って、亡くなった親族の墓を参る。生きている人間が死んだ親族や友人と対話する日だ。


▲地球に急接近する小天体、人間の頭骸骨のように見える(NASA提供)

上記のようにコラムを書きだした時、米航空宇宙局(NASA)が30日、日本時間で1日午前2時ごろ小惑星が地球から約48万6000km離れたところを通過するというニュースを発信した。中米プエルトリコにあるアレシボ電波望遠鏡が観測した画像を見ると、小惑星が人間の頭蓋骨のように見えることから話題を呼んでいる。NASA関係者によると、小天体「2015 TB145」は直径約600mだが、「死んだ彗星」の可能性が高いという。幸い、地球に衝突する危険性はない。

最近では、2013年2月にも小惑星が急接近した。スペインのラサグラ天文台が発見した小惑星で「2012DA14」だ。NASAによると、小惑星は地球から約2万7000kmまで接近したから、静止人工衛星より地球に近いところを通過した。小惑星は大きさが45~50mで重量は推定13万tだった。(「『思考』を地球の重力から解放せよ」2013年2月9日参考)。なお、地球近傍天体(NEO)は数百万と推定されている。

NASAのニュースを聞いて最初に考えたことは、①NASAは当初小天体「2015 TB145」の軌道を正しく掴んでいなかったのではないか、②なぜ、数日前に同小天体の急接近を明らかにしたのか、という2つの疑惑だ。ひょっとしたら、NASAは小天体の軌道が地球に向かっている危険性があると考えていたか、小天体の行方を正しく観測していなかったかのどちらかではないか。前者の場合、NASAは小天体の衝突を公表するタイミングで苦悩するだろう。地球上の人間がパニックになり、大混乱が生じる危険性が考えられるからだ。幸い、小天体は急接近するが、地球に衝突しないと判明したので、写真付きで公表したのではないか。

興味深い点は、31日がハロウィーンに重なることではない。先述したように、1日が「万聖説」であり、2日は「死者の日」だという点だ。すなわち、地球が「死者の日」を迎えた日に「死んだ惑星」と呼ばれる小天体があたかも共に祝うために地球を訪ねてきた、というファンタジーが浮かんでくるほど、その出現は唐突だが、タイミングがいいことだ。もちろん、小惑星に住人がいて、彼らがローマ・カトリック信者だったら、全てはパーフェクトだが、そのようなことは通常、考えられない。

いずれにしても、1年365日の1日ぐらい、死者について思いを巡らせてもいいのではないか。私たちは生きるのに忙しいが、その行先は例外なく死の世界だ。ハムレットではないが、誰もその世界から戻ってきた者がいないのだ(「幽霊が街に現れる時」2013年11月3日参考)。「2015 TB145]の惑星すら死の時を迎えるのだ。

小天体「2015 TB145」は、生きることに奔走する地球上のわたしたちに、「私も死の日を迎えているが、あなたがたも必ず死の時を迎えるだろう」というメッセージを届けるためにわざわざ遠い処から地球に急接近してきたのではないだろうか。全てに偶然はない。必ず意味があるからだ。

少しファンタジーを付け加えたい。ビッグバーンでエネルギーが放出されたが、反物質の世界が今注目されている。ウィキぺディアによると、反物質とは、質量とスパンが全く同じで、構成する素粒子の電荷などが全く逆の性質を持つ反粒子によって組成される物質だ。電子(陰電子)と反電子(陽電子)、中性子(クォーク)と反中性子(反クォーク)のように、全ての存在には全く逆の性質を持った物質が存在する。「物質」と「反物質」が存在するように、人間が生きている物質世界と死後の世界の反物質世界が存在すると考えられるわけだ。すなわち、物質世界で生きてきたわれわれは死後、反物質世界に入っていくことになる。宗教者がいう「霊的」な世界だ。

詳細な反物質世界の解明は科学者の今後の研究に委ねなければならない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年11月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。