やっぱりおかしいNHK? --- 松田 公太

昨日、放送倫理・番組向上機構(BPO*)が、「やらせ」があったのではないかという報道をきっかけに審議していたNHKの2つの番組について、「正確性に欠けるなど重大な放送倫理違反があった」とする意見を発表しました。
[BPO*は、NHKと民放連によって設置された第三者機関で、放送への苦情や放送倫理問題の対応にあたっています]

※BPOから「放送倫理違反」を指摘されたNHK
NHKフリー素材
今回、審議の対象になったのは、『クローズアップ現代 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~』(2014年5月14日放送)と『かんさい熱視線 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~』(同年4月25日放送)です。いずれも同じ内容を取り扱っており、ブローカーを介して出家し戸籍名を変更した多重債務者が融資をだまし取るという手口を紹介しています。

その中で多重債務者とブローカーの相談場面が隠し撮りの構図で放送されましたが、実際には両者は知人同士でした。これについてBPOは、「事実をわい曲したもの」と指摘し、「事実と著しく乖離した情報を数多く伝えた」と結論付けています。

NHKが最も重く受け止めなくてはならないのは、NHK調査委員会で行った独自の最終報告書が否定されたことです。

2番組のヤラセ疑惑について週刊誌の報道があったのは今年3月18日。その後、4月1日にブローカーとして放送された人物からNHKに対して訂正放送の要求がありました。調査委員会が立ち上げられたのはその2日後。そして、それから約1か月後の同月28日、調査報告書が公表されました。

しかし、その内容は「過剰な演出」や「実際の取材過程とかけ離れた編集」があったことを認める一方で、「事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』は行っていない」と結論づけるもの。

BPOの意見書で「もっと深刻な問題を演出や編集の不適切さにわい小化することになってはいないかとの疑問を持たざるを得ない」との指摘がなされているように、NHKは事の重大さにきちんと向き合うことができていないのです。

やはり、その根本的な原因は、公共放送の使命を経営陣から現場スタッフまで、真剣に捉えていないところにあるのではないでしょうか。

最近の日本では、企業の不祥事が頻繁に起こり、まるで日本ではないかのような印象さえ受けてしまいます。

オリンパス、東芝、旭化成(+大手建設・不動産各社)、東洋ゴム、JR北海道・・・

それは「経営者が数字しか見ない利益・株価至上主義」が日本にも一気に押し寄せ、それをカバーするべきガバナンスの仕組みや法制度が追い付いていないから」だとかねてより指摘をさせて頂いていますが、公共放送ではその理屈が当てはまりません。

だからこそ、最後の砦として私はNHKに期待を寄せて、エールを送ってきました

公共放送の最大の意義は「民主主義を発展させる」ことにあります。
民主的意思決定が行われるためには、国民が政治参加するにあたり、国内外の政治・経済・文化に関する多様かつ正確な情報を得られることが不可欠の前提となるのです。

NHKには、受けのいい番組を作って高視聴率を狙わなくてはいけない、そのためならば多様性や正確性を犠牲にしても仕方がないという思い違いは捨ててもらいたい。国民はそのようなことは望んでいません。

自分たちには民間企業のような倒産やクビ切りが無いので大丈夫という驕りがあったらそれも大間違いです。NHKの存在意義について真剣に見直し、このような問題が起こらないように全社的に取り組んでいかなければ、終わりの始まりになってしまうでしょう。代替策として、ランニングコストの圧倒的に低いネットでも、公共の情報は十分に流せる時代になっているという現実を直視する必要があります。


松田公太宣材


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2015年11月7日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部担当)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。