BPOの「クロ現」倫理違反裁定と政府批判を評価する

BPO検証委「重大な倫理違反」―政府対応も批判
BPO放送倫理検証委員会が、NHKの出家詐欺問題を扱った「クローズアップ現代」と「かんさい熱視線」の2つの番組について「重大な放送倫理違反があった」と歯切れの良い意見書を発表した事は誠に画期的で喜ばしい限りである。

しかし更に重要な事は、放送法を根拠に総務大臣がNHKに対し厳重注意をしたことについて「個々の放送番組の内容に介入する根拠はなく、極めて遺憾である」と指摘した事実である。

BPO放送倫理検証委員会からこれだけ具体的に権限の不存在を指摘されながら、法的根拠も明示せずに「放送法を所管する立場から必要な対応を行ったものである」と役人が書いた答弁書を棒読みする高市総務相の「天然」振りは、安倍首相の「女性の活躍推進政策」の評価を落とすだけでなく、数多の有能な女性と国民への侮蔑以外の何物でもない。

放送法の第6条は「放送事業者は、放送番組の適正を図るため、放送番組審議機関を置くものとする。」と番組審議機関を定め、他の文明諸国同様に政府が番組内容に直接口出しできない制度になっており、高市総務相の言い分は明らかに誤りである。

更に、放送法第一条二項は「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること」と定めている事からも、自民党の情報通信戦略調査会がNHKやテレ朝から事情聴取したことは「放送の自由と自律に対する政権党による圧力そのもので、厳しく非難されるべきである」と検証委から指弾されてたのも当然で、寧ろ遅きに失した観がある位だ。

従い総務相は「政府が個々の放送番組の内容に介入する法的根拠も無しにNHKに厳重注意した不明」を国民に詫びると共に、NHKやテレ朝から事情聴取した自民党の情報通信戦略調査会に対し「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること」を規定した放送法に違反しているとして警告するのが本筋である。

そもそも、政党や権力が言論に介入する事を許したら立憲民主国家は成り立たない以上、高市総務相が主張する様な政府の干渉権を担保した法律が現存するなら、直ちに廃案にすべきである。

時を同じくして国連の自由権規約委員会が、韓国が産経の前ソウル支局長を起訴した事を念頭に、韓国当局が政府を批判する者に対し名誉毀損罪を適用する事に「懸念」を表明し「批判に寛容である文化は、民主主義が機能するための基本である」と指摘したが、これは高市総務相や自民党にも当てはまる警告である。

「報道の自由度ランキング」で、日本が世界最貧国の マラウイや 高市大臣が愛して止まない 韓国 にも劣る 61位 にランクされるている背景には「番組の内容が放送法に抵触する」等と発言して憚らない非民主的な現職大臣が存在する事が一因であり、冤罪が続発しながら、起訴後の有罪率が北朝鮮を上回る99%と言う驚くべき数字である日本の強権的司法制度に対する文明諸国の深い疑いの目が原因になっている。

一方、BPO放送倫理検証委員会がNHKに「干渉や圧力に対する毅然とした姿勢と矜持を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる」と警告した事も、権力へのおもねりや見識のない発言が目立つ会長の言動で、NHKの統治制度に対する疑念が高まっている事を考えると,時宜に適した警告だと言える。

今回の様に、BPOの存在意義が見られた事は心強い限りだが、日本のメディアが「マスゴミ」と言われる程に水準が落ちている事も否定できず、「ごみ」に自由を与えて何になるのか?と言う疑問に答える必用もある。

然し、「マスゴミ」を蔓延らした元凶が、我々国民の民度の低さにある事も否定できない。これを機会に国民と報道の自由や質の関係を真剣に討論する機運が盛り上がる事を望んで止まない。