地方活性化を本気で望むならマインドを変えるべき

長崎総合科学大学の前田陽次郎さんから返信を頂きましたので、私の方からも回答をさせて頂ければと思います。少々辛めの意見ですがご容赦頂ければ幸いです。

まずは地方税・地方交付税に関する大枠の話についてお答えさえて頂きます

根本的な見解の違いを申し上げますと、私は「地方が都市部と同様に十分なインフラが整備されないとおかしい」ということは不可能かつ無謀だと思いますし、また高所得者から低所得者への所得移転も無条件では同意しません。

その上で、地方財政の話について申し上げますと、現状の地方交付税などの地方への強制的な税配分の継続を前提とした場合、東京都民が地方自治体に対して利用使途を査定するという制度の導入には同意します。そして、過剰な財源移転を止めることについても当然に賛同します。

また、ご提案の各都道府県から得られる消費税収入を基礎とした地方交付税廃止案は、都市部にとっては消費税偏在の関係から大量に資金が残って非常に良いことだと思います。さらに、消費税の地方税化を通じて増減税競争が起きることで足による投票が進むことも良いことです。

仮に東京都の税収が潤沢になった場合、余剰見込みの税収を使った都内消費税減税などを通じて、東京都の景気を大幅に浮揚させることで、首都圏3500万住民の所得・雇用が大幅に改善すると思います。おそらく国民的な住居移動が促進されて首都圏人口は増加し、経済効果の恩恵を受ける人の数は増大し続けるでしょう。限界集落まで含めた国民全体という話は難しいかもしれませんが、単純にバラマキを行うよりも都市近郊の地方自治体の振興には大いに役立つはずです。

資産格差・所得格差についてですが、田舎の地方自治体内部にも所得格差・資産格差は当然に存在しますので、まずはそちらで平等化を実施してみてください。それを一国レベルで実施するのか、地域単体で実施するのかの違いでだけです。本当に成り立つ話でしょうか、想像してみてください。

私が何度も申し上げていることは、都市からの財源移転を前提としなければ、地方の経済も財政も成り立たないことを素直に認めるべきであり、都市に集中投資することでスムーズな移行を実施するべきだということです。地方消滅に向けた準備や移住促進を速やかに行うべきだと思います。

ごめんなさい、細かい質問に回答するならコンサルティングフィーを頂けますか

さて、その他の前田陽次郎さんの諸々の疑問に一つ一つ反論していくこともやぶさかではないのですが、この場でそれを行うことはいたしません。なぜなら、アイディアも紙面もは有限だからです。

前田さんは優秀な都会人が「ふるさと納税のような制度を提示してあれば」とおっしゃっていますが、それらは無料ではないために地方活性化策についてこの場では回答する気はありません。

ちなみに、自分は現実に再生不能な地方自治体がゴロゴロしている中で、あたかも再生可能であるかのような話を安易にすること自体が無責任だと感じています。

ご紹介された「ふるさと納税」で賄える税収など微々たるものですし、本当に儲かるモノなら地方自治体ではなく民間で運営したらよいと思います。また、中途半端なアイディアコンサルである伝道師やら地域おこし協力隊のような地方を途上国扱いする仕組みで事態が改善するとも全く思いません。

ただし、前田さんに限らず地方活性化にお悩みの首長様などがいらっしゃれば、容赦のない意見を述べて良いのであれば、活性化策のアイディアを有料でお答えさせて頂きます。

営業サービスとして地方活性化の基本マインドについて述べさせて頂きます

そうは言っても、「アイディアは無い」と言われるのも癪なので、下記の通り基本的なものの考え方を提示します。これらが無くして地方が活性化することはありません。

地方活性化についての基本的な3つの考え方について述べさせていただきます。

(1)資本主義マインド

最初に変えるべきことは、金持ちから貧乏人にお金を移すことが当たり前という発想を止めることです。そんな考え方が蔓延っているところに「お金を稼げる人」はイケダハヤトさんのようなプチブル個人事業主などの例外ケース以外はワザワザやって来ません。地域の富はお金を稼げる人が創ります。そういう人を大切にする政策を実行しましょう。

(2)ビジネスマインド

民間経済が回復することはそのまま地域が活性化することであると理解しています。したがって、民間の経済力が豊かな都市部とのビジネスを積極的に行うべきです。都市部からの財源移転(漁師が魚を貰っている状況)から抜け出て、民間経済が回る(魚を釣る)方法を覚えましょう。ちなみに、私が何度も言っているように、既に魚が釣れないほどに砂漠化が進んだ場所であることが判明した場合は速やかに住む場所を変えることをお勧めします。

(3)主体性マインド

たとえば、観光振興を例にとってみれば、大半の観光資源は元々別用途で使われていたものです。それを観光資源にしていくためには主体性が必要であり、地域の人が自分で自発的に考えて実行できるマインドが必要です。地方創生予算があるからとか、同じ国民だから最低限の水準を整えるべきとか、というしみったれた発想ではなく、隣の街よりも稼げるまち、都市よりも稼げるまちを目指すことが大事です。

私からは以上の通りとなります。何度も申し上げますが、これ以上のアイディアをお求めであれば、コンサルティングフィー次第では相談には乗らせて頂きます。よろしくお願いいたします。

渡瀬裕哉
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事