多くの方が犠牲となったパリ同時多発テロが起きたのは現地時間13日の午後9時過ぎ。数時間後の深夜にはオランド大統領がフランス全土に国家非常事態を宣言しました。
当局の発表によると、非常事態宣言に基づいて18日までに414カ所を令状なしで家宅捜索。ロケットランチャーなど重火器を含む75の武器を押収したとのこと。60人が逮捕、118人が自宅軟禁を命じられ、首謀者とされるアバウド容疑者も18日の銃撃戦での死亡が確認されました。
最悪の事件から6日間、フランスは国を挙げてのテロ対策を続けています。
非常事態に対してこのように迅速な対応が可能となっているのは、仏憲法に「国家緊急権」が設けられており、一時的に国の権限を強化して国民の権利を制限することが認められているからです。
日本で同様のテロ事件があった場合は、残念ながら同じようにはいきません。
日本国憲法には同様の規定は存在せず、既にある法律で認められている以上の人権制約ができません。現状で緊急事態についての定めがある法律は、国民保護法や災害対策基本法、警察法などほんの一部にすぎず、国に与えられる権限も極めて限定的なため、フランスのような対処はできないのです。
※東日本大震災は警察、消防、海保、自衛隊が現場で奮闘したが、
テロ対応には法的課題も多い(陸上自衛隊サイトより)
このことは、日本がテロとの戦いに備える上でも、首都直下型や南海トラフ地震などの大規模災害発生を想定した場合でも、早急に検討しなければならない最重要課題です。
(コチラをご参照ください )
私も東日本大震災直後に何度も被災地入りしましたが、緊急車両の通行を困難にするような放置車両があっても簡単に撤去できない(所有権の問題)、支援の為の物資をヘリから降ろせない等、非常時を想定した法制度の不備を痛感しました。
個別法を作っていけばいいという考えもありますが、全てを網羅し切ることはできません。これまでの災害で何度も「想定外」「未曾有」という言葉が使われているように、全ての事態を予測して法制化するのは難しいのです。
しっかりと憲法の中に規定を置き、政府の機動的な対応を可能にしておくことが必要です。もちろん、その際には、限界や責任主体も明確にするなど、国家権力の暴走を防ぐための歯止めがなくてはなりません。安保法制のように国会によるコントロールを及ぼす仕組みも重要です。
国家緊急権を創設する必要性については与野党の多くが一致しています。問題となるのは、その具体的中身。来年の参議院選挙では、各党がこの点についてしっかりと考えを表明し、国民的議論を尽くすべきだと考えています。
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編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2015年11月20日の記事「日本でテロが起きた場合」を転載させていただきました(タイトルは改題。画像はアゴラ編集部)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。