ルワンダで義足を作り続ける夫妻。 --- 岩田 温


※ルワンダ大虐殺で足を失った100人に義足と杖を届けたい!ページより(アゴラ編集部)

自分自身が衝撃を受けた政治的問題というのが幾つかある。ナチスのジェノサイド障害者殺戮ロシア革命の悲惨な殺戮中国のチベット侵攻、そして、ルワンダのジェノサイド

人間が人間を殺す。しかも、その理由は、ある人間が何かをしたからではない。何かの集団に所属していたというだけで殺す。

人間を動物と区別するものは理性の有無であるという。そして人間の方が動物よりも高尚だというのがギリシアからの哲学の基本だった。

だが、本当に人間は動物よりも高尚だと断言できるのか。

理性によって作りだしたイデオロギーの虜となって、脅え、罪なき人々を殺すのは人間だけだ。動物は本能に従って、弱肉強食の世界に生きているが、イデオロギーの虜にはならない。

人間が作りだした「正義」が人を殺す
「正義」を求めることが出来るのは人間だけだが、その「正義」は時に「狂気」に取って代わる。
複雑な人間が作りだす政治。そんな政治に興味関心がある。
 
ルワンダでは、多くの人々がジェノサイドで生命を落としたが、生命を落とさぬまでも、手足を失ってしまった人々も多い。

そんな状況で、ルワンダの人々に「義足」を作り続けている夫妻がいる。ガテラ・ルダシングワ・エマニュエルさん、ルダシングワ・真美さん夫妻だ。

私は以前からルワンダの問題に興味関心があったため、日本で開催された夫妻の講演会に参加させて頂いた。1997年にルワンダの首都キガリで義肢製作所を作り、18年。今までに8000人への支援を行ってきたという。全ての人に義足を提供したいが、現実には、金銭的な問題もあり、限られた人々にしか義足を提供できていないという。

ルダシングワ真美さんは、自身でも義足を作っている。彼女が義足を作ることになったのは、1991年に現在の夫であるガテラさんが来日した際のことだ。もともとガテラさん自身が、右足に障害があり、義足をつかっていた。そのガテラさんの右足の義足が来日した際に、壊れてしまったために、横浜の義肢製作所で修理をしてもらった。その修理している様子を見ながら、夫妻は、この技術は、必ずルワンダで必要とされている技術だと確信した。

ここからが凄いのだが、真美さんは、早速、この義肢製作所に弟子入りし、五年間の修行を終えて、義肢装具士の国家資格を取得してしまう。驚くべき行動力というより他ない。以後、夫婦は精力的にルワンダで義足を作り、多くの人々が歩けるように支えてきた。余人を以て代えがたい功績だと言ってよいだろう。

そんな夫妻が新しいプロジェクトを立ち上げた。
「ルワンダ大虐殺で足を失った100人に義足と杖を届けたい!」というプロジェクトだ。 
ルワンダで一人でも多くの人に義足と杖を提供するためのプロジェクトだ。

個人で出来ることは限られているが、こうした努力によって、実際に義足を得て、歩くことが出来る人々がいる。 是非、一人でも多くの方々にご協力をお願いしたい。



編集部より:この記事は岩田温氏のブログ「岩田温の備忘録」2015年12月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は岩田温の備忘録をご覧ください。