民主党の岡田克也代表は7日、維新の党の松野頼久代表と会談し来年の通常国会で統一会派を組むことで大筋合意した。
民・維統一会派結成で合意=合流も視野―党首会談
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151207-00000063-jij-pol
前日、再選されたばかりの松野氏は新党結成に意欲を示すが、民主と維新の思惑は大きく異なる。来年の参院選に向けた「野党結集」の道のりは険しい。
会派とは、国会内で行動を共にする議員の単位のこと。一般的には政党の所属議員と一致するが、無所属議員が特定の会派に属したり、少数政党がまとまって一つの会派を組んだりすることがある。異なる政党や政治グループが結成する会派を統一会派と呼ぶ。
1993年以降の新党ブームのころは政党の離合集散が激しかったため、多くの統一会派が結成されたが、最近は目立った例がない。民主と維新の統一会派が実現すれば久々の「大型統一会派」だが、与党との規模の差は大きく、存在感を示せるかどうかは不透明だ。
比例議員は民主に入れず
維新の党はかねて「各政党が解党し、新たな政党を作る」と主張、民主党は「吸収合併ならいい」との立場を示してきた。「名前も違うまっさらな政党でなければ有権者の支持を得られない」(維新)「支持者や地方議員を裏切れない」(民主)というのが両党の建前だが、本音はまったく違う。
維新が民主に解党を求めているのは、維新の所属議員のほとんどが「比例選出」だからだ。大阪系が離脱した現在の維新の衆院議員21人のうち、直近の2014年衆院選で選挙区当選したのは江田憲司氏ら4人のみ。残りはすべて「比例復活」組だ。参院議員5人は全員が全国比例選出。しかも全員がみんなの党公認で当選している。
国会法は比例代表で戦った政党への移籍を禁じているので、仮に維新が民主に吸収合併されたら、比例選出議員は過去の選挙で戦った民主党には移れない。松野代表を含めた大半の議員が新党には移れず、宙に浮いてしまうのだ。
各政党がいったん解党し、まっさらな新党を作れば、彼らも新党に移ることができる。新党の候補として次の選挙にも出る可能性ができる。自分たちが生き残るためには吸収合併ではなく、解党しかないのである。
金庫に眠る100億円超のカネ
一方の民主党側にも、解党案を飲めない理由がある。民主党内に貯まった膨大な資金を手放したくないというのだ。
民主党は2009年の衆院選で大勝し、多額の政党交付金を得た。その後の連戦連敗で減る一方ではあるが、今も多額の「貯金」がある。2014年から2015年への繰越額は132億円。今年は大型選挙がなかったため、今も相当な額が金庫に眠っているとみられる。
仮に民主党が解党して、新たな政党を作ることになれば、これらの金は国庫に返納するのが基本。来夏に参院選を控え、衆参ダブル選挙もささやかれる中、この金は決して手放したくないというのが民主党議員の本音である。
細野豪志氏や前原誠司氏ら民主内で解党論を唱えるのは選挙地盤が強く、金にも困っていない一部の議員のみ。細野氏らについても「いつもの『口だけ』で、本気じゃない」(永田町関係者)との揶揄が聞かれる。
来年の通常国会で統一会派を実現したとしても、そこから新党結成までは極めて険しい道のりが予想される。来夏の参院選まで残された時間は少ない。今のまま各党が自分たちの都合を押し付け合っていれば「来夏ダブル選、与党の3回連続圧勝」が現実味を帯びてくる。
山本洋一:元日本経済新聞記者
1978年名古屋市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。政治部、経済部の記者として首相官邸や自民党、外務省、日銀、金融機関などを取材した。2012年に退職し、衆議院議員公設秘書を経て会社役員。地方議会ニュース解説委員なども務める。
ブログ:http://ameblo.jp/yzyoichi/
編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2015年12月7日の記事『金庫に眠る100億のカネ、そびえ立つ法律のカベ…民主と維新、合併に向けた「本音と建前」』を転載させていただきました(見出しはアゴラ編集部で改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。