米10月貿易収支は438.91億ドルの赤字となり、市場予想の405億ドルから拡大した。9月の424.57億ドル(408.12億ドルから修正)を3.4%上回る。輸出の減少幅が輸入を上回り、赤字拡大につながった。
内訳をみると、輸出が前月比1.4%減の1840.63億ドル。9月の1867.65億ドルから減少し、2012年10月以来の水準へ縮小している。輸入も0.6%減の2279.53億ドルと2ヵ月連続で減少しつつ、減少幅は輸出以下にとどまった。国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、603.27億ドル。直近で最大を記録した8月の630.12億ドル以下だったとはいえ、9月の573.74億ドルから5.1%増加した。なお2014年の貿易赤字は5050億ドルとなり、2009年以来の水準まで改善した2013年の4715億ドルから増加していた。
米10月貿易収支、今回は輸出が弱く前月より赤字増加。
(出所:My Big Apple NY)
JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、結果を受けて「米10月貿易赤字が拡大しただけではなく、9月分も修正を経て予想以上に赤字が増加した」と指摘。1月分は「ドル高の余波により量ベースにて2.4%減、名目ベースで2.5%減となった」という。純輸出のマイナス寄与度が広がるリスクをにらみ、「当方の米10-12月期GDP予想の2.0%から下振れする可能性が出てきた」との考えを示した。以下は、今回の貿易収支における輸出と輸入の内訳のほか各国ごとの貿易収支動向。
輸出の内訳をみると、モノは前月比1.4%減と9月の1.4%増を打ち消した。ドル高と世界景気の減速を背景に産業財が引き続き弱かったほか食品・飲料、消費財、自動車が減少。加えて、増加トレンドをたどっていた資本財が減少に転じた。
(増加項目)
・サービス 0.7%増、前月の0.2%増と合わせ少なくとも7ヵ月連続で増加
(減少項目)
・食品/飲料 5.5%減、前月の3.7%増から減少に反転
・産業財 4.6%減、前月の±0%から減少に反転
・消費財 3.0%減、前月の8.0%増から減少に反転
・資本財 2.0%減、前月の2.0%増から反転し4ヵ月ぶりに減少
・自動車 1.3%減、前月の1.3%増から減少に反転
輸入の内訳をみると、モノが0.6%減となり前月の2.2%減に続き減少した。価格の下落だけでなく、量ベースでの輸入が10.6%減と前月の5.1%増から落ち込み、全体を押し下げている。原油を除いた場合は0.4%増に転じ、前月の1.7%減から切り返した。
(増加項目)
・資本財 1.1%増、前月の2.0%減から反転
・自動車 1.0%増、前月の2.8%減から転じ3ヵ月ぶりに増加
・消費財 0.5%増、前月の0.7%減から反転
(減少項目)
・産業財 5.0%減、前月の4.0%減と合わせ3ヵ月連続で減少
・食品/飲料 4.0%減、前月の0.7%増から転じ3ヵ月ぶりに増加
国別での貿易赤字動向をみると、最大の赤字を抱える中国への赤字は前月比9.1%減の329.74億ドルと6ヵ月ぶりに減少した。8月11日から3日間にわたり中国人民銀行が人民元を切り下げたため中国向け輸出が増加してから、漸く減少に転じた格好だ。日本も7.6%増の56.06億ドル。欧州への赤字額は23.8%増の157.26億ドルと、3ヵ月ぶりに減少した9月分の落ち込みを完全に打ち消した。主な原油輸出国への貿易収支は原油安にも関わらず一部で赤字が拡大し黒字が縮小した。メキシコへの貿易赤字は10.2%増の63.59億ドル。一方でカナダは5月に続き貿易黒字に転じ、2.52億ドルをつけた。OPECへの貿易黒字は33.5%減の9.62億ドルだった。
——米10月貿易収支では、ドル高の爪痕がはっきり確認できたほか外需の軟調ぶりが露呈しました。16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では2006年6月以来の利上げに踏み切る見通しですが、ドル高を抑制しなければ純輸出の寄与度が低下し成長鈍化が余儀なくされてしまいます。米11月雇用統計では、米利上げペースが緩慢な場合ビハインド・ザ・カーブとなる懸念が一部で指摘されていましたが、やはりゆっくりとした利上げとなる公算です。国別動向でブラジルが貿易収支動向のトップ10圏外に落ち込んだように、エマージング国の一部では深刻な景気後退に陥っている国もありますし・・。
(カバー写真:Louis Vest/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年12月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。