日本の出生率は、最低を記録した2005年の1.26以来、徐々に回復傾向にはあるが、それでも2014年でわずか1.42、1年間の出生者数も2015年の今年ついに100万人を割るかと言われています。
ここ近年の出生率を国別で見てみると、台湾・マカオ・香港・韓国・シンガポールが世界トップレベルの低さであって、日本や中国も含めて儒教圏がかなり低い数値です。儒教では子供よりも老人を敬えと教えられますので、儒教が少子化に与える影響は少なからずあるのではないでしょうか?
少子化の現在、出産が希少な体験のようになってきてるかと思います。私の周りにも子供が全然いません。というより未婚だらけです。最近、久々に友人の出産報告を受けました。出産の様子を聞くと、私達夫婦はすでに助産院にて子供を出産していたので、病院と助産院では何もかもが違うなぁとあらためて思いました。これを機に、助産院での出産についての体験と私(男性)の意見を述べたいと思います。何かの参考になってくれれば、果ては少子化の歯止めに何かしらの役に立てれば、と書いてみます。
「医療行為について」
病院と助産院の大きな違いの1つに、この「医療行為」があります。助産院では「医者」がいないため「帝王切開」などの医療行為ができないのです。では医者のいない助産院で誰が出産を看てくれるのかと言えば、助産師です。助産院には医療行為が禁止されているので色々なリスクがあり、何より病院に数回行って自然分娩で産める健康体だという診断が必要で、年齢制限もあります。出産の際に緊急の医療行為が必要になった場合は、提携している病院まで移動しての出産になります。
「助産院の方針について」
助産院の方針は千差万別です。お産婆さんがやるような古風な方法や、積極的に自然療法(ホメオパシーなど)を取り入れる助産院など色々です。私達は自然療法に懐疑的なので昔ながらのシンプルな助産院を選びました。
「費用について」
妊婦検診は6~12万円ほどの公費負担(自治体による)があり、分娩費用・産後の入院費などは「出産育児一時金」として39~42万円ほどの支給(健康保険などから)があります。全部合わせた費用の相場は助産院で40~50万円ほど。これだとほとんど自己負担無しですみます。病院の相場は50~70万円、無痛分娩やホテルの様な個室、豪華料理などをつけると100万円前後です。
「検診について」
妊娠後の最初の2回の検診を病院で受けたのですが、1時間以上待って5分で終わりました。病院での検診時間は短いとよく聞きます。妊婦1人1人とじっくり向き合う時間が取れないのでしょう。助産院での検診は毎回1時間近くやってもらえました。お産のことや妊婦体操、食事や運動など色々なことを教わりました。私自身も毎回妻に付き添って一緒に体操などをしました。
「陣痛促進剤について」
陣痛促進剤とは陣痛を誘発・促進させるための薬です。病院ではよく使うそうです。破水しても陣痛が始まらない、胎児を早く取り出したほうがいい場合などに使いますが、病院によっては長いと30時間近くかかる出産に立ち会っている時間はないので、陣痛促進剤で早く産ませようとする所もあるようです。年末年始や長期連休、妊婦の込み具合などで調整するとも聞きます。緊張時には必要だと思いますが、積極的に使用するのはどうなんでしょう。助産院では使いません、というより医療行為の為、使えません。
「出産の体勢について」
病院での出産は開脚台の上という場合が多く、これは数百年前の欧州の医者が発明したという話で、あの体勢は医者にとって扱いやすく妊婦にとって産みづらい体勢だと言われています。実際に胎児は重力に反して産道を通らなくてはなりません。助産院では自然体位・フリースタイル・アクティブバースなどと呼ばれており、妊婦の好きな体勢で挑んでよく、四つんばいになったり、大きいクッションを抱きかかえたり、天井からぶら下がっている縄にしがみついたり、水中出産だったり、一番産みやすいと思う体勢でいいのです。トイレが一番リラックスできるという人もいます。産まれるまで助産師がずっと付き添ってくれる場合が多いです。知人は25時間ずっと助産師が付き添ってくれたそうです。病院ではずっと付きっきりということは少なく、妊婦が1人きりになる時間も多いと聞きます。病院でも出産直前まで実際に付き添ってくれるのは医者ではなくほとんどが助産師だそうです。
「会陰切開について」
会陰切開とは、会陰(膣と肛門の出口の間)をハサミで切ることです。会陰裂傷をする(自然に切れる)前に切ってしまった方が術後の予後に良い、会陰裂傷よりも縫合しやすい、胎児を早く取りだせる、などが会陰切開の理由だそうです。病院で実際にする割合は多く、60~70%前後の妊婦が会陰切開を経験しているそうです。助産院で聞いた話では、出産時に会陰が裂けやすいのは急いで産ませようとするからであって、長い時間をかければ不思議とゴムのようにちゃんと伸びてくれるのだとか。出産の時間も、赤ちゃんと妊婦のコンビネーションで決まるのだそうで、時間がかかるのは赤ちゃんが母を気遣って、ゆっくり出てきてくれるのだとか。会陰切開も陣痛促進剤と同じく医療行為のため、助産院ではできないのですが、法律のグレー部分や慣習、緊急時のやむをえない状況など、一概に全面禁止だとは言えなそうです。
以上、出産を医療としてとらえ安全を重視するのか、自然なものとして自由さを求めるのか、によって病院と助産院の選択が決まるように思います。私達は比較検討した結果、助産院を選びました。
私は、妻の陣痛が始まってから一緒に助産院へ行き、出産までずっと妻の背中をさすっていました。男性にはそれくらいのことしか協力できないのです。まさに傍観者という感じですが、同じ空間にいるだけでも、ほんの少しぐらいの役には立ったのでしょうか。胎児の頭が出てきた時は見入ってしまいました。胎児は産道を通るとき、頭蓋骨の位置や形を変えながら出てくるそうです。まさに生命の神秘ですよね。胎盤は生姜醤油で食べました。レバ刺しのような味ですね。意外とおいしい。この話を他人に話すと9割の人間が私を変な目で見ました。世界各地に昔からある話なんですけどね。病院だと医療廃棄物として捨てねばならず、費用もかかります。
出産予定日が遅れ、このままでは病院での出産に強制変更になってしまう、と焦った時に、「階段を降りる振動で胎児が下りてきやすくなりますよ」とアドバイスを受け、「じゃあ山くだりなんてどうですか?」「いいですね」、というわけで小高い山の頂上まで車で行き、1時間ほどかけて山くだりをして、なんと同じ臨月の妊婦さんと山でばったり出会ったのは、懐かしい思い出です。他にもいっぱいあります。
上記の文はあくまで参考程度にして、いざ妊娠した時は、病院でも助産院でも複数の院で話を充分聞いた上で、自分自身で納得いくまで調べ関係者同士で話し合ってから、選択したほうがいいと思います。
鈴木 健介
無職37歳。
バックパッカー。訪問42ヶ国。
音楽家。休止中。シングル「善悪無記の形相」アルバム「ドクサ」発売中。
早大卒。
旅での思索を書いた日記、けんすけのこばなしより