SHINOBY`S BAR 銀座に行く途中で数寄屋橋交差点を通ると長い行列ができていました(写真)。年末ジャンボ宝くじを買う人の行列のようです。西銀座チャンスセンターというのは宝くじファンの間では当選確率の高い売り場という都市伝説があって、その窓口でわざわざ買いたい人が、寒い中でも行列を作って順番を待っているのです。
この行列に遭遇する度に思うことは、宝くじという巧妙な名前の裏に隠された残酷な事実です。宝くじの還元率は45%程度に過ぎません。半分以上は宣伝費や地方自治体への交付金として使われているのです。1000円買ったら550円を差し引かれて、残りの450円を購入者の中で再配分する仕組みです。集めたお金から胴元が半分以上を差し引かれてしまっているのです。「宝くじ」ではなく「貧乏くじ」です。
また、宝くじは収入の低い人ほど購入金額が多いというのが世界的な傾向です。資産の少ない人から甘い話で富を巻き上げ、地方自治体などに再配分する。富の配分の仕組みとしては、間違えた方向性を助長するものです。
たばこのパッケージには「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。」といった文言がパッケージの30%以上の面積に掲載されています。これは、法律で定められているそうです。
投資信託の目論見書にも、商品にかかる手数料が詳細に示されています。そして、購入する前には目論見書を確認したことをチェックされ、適合性の原則など多くの厳しいコンプライアンスチェックを経てようやく購入することができます。
ところが、宝くじには「購入金額の55%が差し引かれ、残り45%の中から当選者への支払いが行われます」といった記載はありません。窓口で買う前にリスクの説明も無ければ、コンプライアンスチェックもありません。金融商品だけではなく、競馬やカジノよりもさらに期待値の低いものを、お金の知識の無い人たちが、わざわざ並んで買っている。見ていると、いつも何だか悲しい気持ちになります。
資産運用セミナーでマネーリテラシーを着実に高めて、お金との付き合い方を変えている人たちと、寒さに震えながら行列して半分以上が持っていかれてしまう宝くじを手に入れようとする人。個人の自由と言ってしまえば、それまでですが、少なくとも私の周りにいる人には後者にはなって欲しくないと思います。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年12月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。