三店方式は破綻した。今行われているのは賭博である。 --- 宇佐美 典也

ども宇佐美です。

今回もしつこくパチンコVW問題についての話です。今回は「三店方式」 との関係でこの問題についてまとめたいと思います。結論から言いますと私は

「高射幸性の違法機を用いた現在のパチンコホールの営業は”三店方式”の合法性要件を逸脱しており、賭博開帳図利罪(懲役3~5年)にあたる」

と考えています。そして個人的にはこの議論こそが一連の問題の核心だと考えています。議論を進めていきましょう。さてまずは

  「三店方式とは何ぞや?」

ということなのですが、一言で言えば現在のパチンコの換金方式のことです。日本では原則として刑法186条によりギャンブル場を開くことは禁じられています。条文を紹介すると以下の通りです。

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(常習賭博及び賭博場開張等図利)
第186条
 1常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。
 2賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
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法律上この刑法186条の例外と明文化されているのは競馬、競艇、競輪などの公営ギャンブルのみです。つまり民間企業によるギャンブル場の開設は認められていません。それにも関わらず実質的にギャンブルであるパチンコホールの運営が認められているのは、以下のような特殊な仕組みを用いて迂回して換金行為を行っているからです。


 ①客はホールから有料で球を借りてパチンコに興じる(通常1球4円)
 ②遊技終了後に客はホールで出玉を換金用の特殊景品(純金)と交換する
 ③客はホール外にある換金所(古物商)で特殊景品を現金に交換する
 ④景品問屋が換金所から特殊景品を買い取りホールに卸す

この一連の換金方式を「三店方式」と言うのですが、この手続きの中ではパチンコホール自体は直接換金を行っていません。あくまでパチンコ屋は有料でパチンコサービスを提供しているだけで、そのサービスの一環として客が技能を活用して球を増やした場合に景品を提供している、ということになります。風営法では第23条で景品として現金や有価証券を提示することは禁じていますが、純金を景品として提供することは禁じられていません

少し極端な物言いになりますが、パチンコ屋がやっていることは「風営法」というルールの中ではゲームセンターがUFOキャッチャーで景品を提供しているのと形式上変わらない、ということですね。客が獲得した景品を外で売って換金しようがしまいが、それは店は関係なく客の勝手、ということです。平成18年4月「警察学論集」(59巻4号105頁)では当時の担当者である鶴代隆造警察庁生活安全課課長補佐(当時)がこうした関係を

「営業者が客から賞品を買い取ることは禁止されているが、第三者が客から賞品を買い取ることが禁止され ているわけではない。従って、現行の換金行為のうち、営業者と関係のない第三者が客から賞品を買い取ること は直ちに違法となるものではない」

と表現しており、これが行政の有権解釈ということになります。この中で書かれている「直ちに違法となるものではない」という表現の意味合いですが、上記①~④の一連の流れをパチンコホール、換金所、景品問屋が結託して行った場合それは、実態としてギャンブル場を運営していることになります。そのためパチンコホールと換金所と景品問屋が人的・資本的関係などで一体的な運営をしている場合、それは違法にあたる可能性がある、ということです。

ま、ごたごたと色々と書きましたがパチンコホールが”風営法の枠内で三店方式を運用している限りは”警察から取り締まられることは無いということです。

ここで大事なことは「風営法の枠内で」というところでして、例えば風営法の枠外にあるカジノを開設して三店方式を用いたとしても、それは当然にして賭博場開帳図利罪で摘発されることになってしまいます。当然ですよね。そうじゃなきゃ刑法自体がザル法になっちゃいますから。この関係を図で表すと以下のようになります。


繰返しになりますが、本来パチンコホールというのは、①風営法の範囲の中で、②三店方式を遵守するからこそ合法と考えられるわけです。①、②いずれの要素がかけても、賭博場開帳図利罪にあたることになります。だからこそ「三店方式のカジノ」は刑法違反ということになるわけです。

ここで問題となるのが現在のパチンコホールです。これまでの当ブログで再三述べた通り現在我が国に存在するほぼ全てのパチンコ機は違法水準であり、当然そのパチンコ機を設置している全パチンコホールも風営法に反して違法営業を続けていることなります。つまり今市中で営業しているパチンコホールは風営法の枠外で三店方式を行っていることになります。上でいう①の要件がかけています。

必然的に今のパチンコホールの営業は賭博場開帳図利罪に違反しているのではないか???

という疑問が生じるわけです。というか論理的には「三店方式のカジノがアウト」なのと同じ理屈でそうなります。つまり我が国では今公然と刑法違法がまかり通っている可能性が高いわけです。空気を読まずに誰かが刑事告発しようものなら全国のパチンコ店オーナーが次々と懲役刑を課されることも十分考えられるわけです。。。空気を読まずに誰かが刑事告発しようものならね。。。

「ではこうした状況を解決するにはどうすればよいか??」

と言いますとそれは非常に単純なことです。違法水準の高射幸性パチンコ機(=現状設置されているほぼ全てのパチンコ機)を今すぐパチンコホールから全台撤去すればいいだけです。

「え、そのお金は誰が持つのか?」ですって、そんなこと知りませんよ、ただ普通に考えれば違法機を納入したメーカーがその費用を持ってホールに補償するのが世の常識なんじゃないですか?前回の記事の繰返しになりますが、違法な物を売りさばいて儲けるような商売がまかり通っては何のための風営法か、という話ですから。

その上でパチンコホールは違法営業を続けた償いとしてギャンブル依存症に伴う社会問題の対策の基金を作るのが筋というものなんじゃないでしょうか。この点についてはまた別の機会に述べます。

ではでは今回はこの辺で


編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2015年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。