花燃ゆ、視聴率が歴代ワーストタイという無残な結果に・・・
NHK大河「花燃ゆ」が歴代ワーストタイの視聴率、全50話の期間平均は12%となりました。
はっきり言って、「当たり前だ」と言いたい。
「無名の女性を主人公にした」「幕末男子のそだて方とかコンセプトがおかしい」とか、色々な意見があるわけですが、大河ドラマの筋として日本国民全体を侮蔑したものであったことが原因だと思います。
朝ドラ「あさが来た」も一般的にはほぼ無名の女性が主人公ですが、その内容が共感を生んで人気を博していいます。NHKは何が違うのかを反省し、公共放送の中立性について改めて考え直すべきでしょう。
主人公が吉田松陰の妹、その旦那が群馬県令という丸出しの征服者史観
本作は主人公が明治維新の立役者の一人である吉田松陰の妹であり、その旦那は明治政府官僚である群馬県令の楫取素彦(かとり・もとひこ)という、完全に維新政府万歳、つまり「長州=山口県」万歳というコンセプトで出来上がっています。
西日本や山口県のみの放送範囲で終わるならまだしも、征服者として関東の地に君臨した県令を持ち上げるとはあまりにも不見識極まり無いのではないか。群馬県は徳川幕府に近かった譜代大名らが治めていたエリアでしたが、楫取県令は外部から連れてきた官僚らを中心に、群馬県の産業振興、教育改革、その他諸々の功績を挙げた人物です。
群馬支配を確立していくプロセスで、楫取県令は高崎から前橋に県庁を嘘の約束をして移転し、民間側の代表であった自由民権運動の担い手であった有信社ら住民の嘆願を無視し続けた上に、最終的には軍隊の出動寸前の状態まで起きました。
長州による北関東支配の始まりとしての「花燃ゆ」の位置づけ
楫取県令が軍隊を動員して鎮圧しようとした有信社は上毛地域の民権運動の中心になった政治結社で、有信社の代表であった宮部襄は明治14年の自由党時に党幹事となり、星亨ら自由党系弁護士を結集した広徳館の館長を務めるなど、上毛地域の理知的な代表者でした。
楫取県令が運よく退任した後、群馬県では松方デフレの影響で自由党内の左派が台頭して群馬事件という激化事件が発生します。この暴動を主導したのは上記の宮部ら自由党主流派ではなく途中参加の貧困農民層と自由党急進派でしたが、維新政府が推進したデフレで没落した農民が背負った借金苦などが背景として存在していました。
群馬事件後、北関東では各地で激化事件が頻発するようになっていき明治政府による弾圧が行われるようになっていきます。仮に楫取県令が退任しておらず役職を続けていれば彼の手によって貧困農民層の弾圧が行われた可能性すらあります。
「花燃ゆ」の物語とは、長州人の過激な革命派の妹が長州のエリートと結婚し、維新政府に対抗した自由民権運動が盛んな上毛地域に赴任し、政府による殖産興業によって人々を懐柔・支配していく歴史の始まりを描いたものです。
現代まで続く長州支配、これ見よがしにした「花燃ゆ」、東日本の魂は燃えるのか
戦前は西日本、特に山口県から首相が輩出されることが通例でした。戦前の首相の最多出身県は山口県で5名であり、東日本は東京・北陸を除けば岩手3名、栃木1名という見事なまでの弾圧ぶりが戦前の政治構造を如実に表しています。
歴代首相の出身県一覧(社会実情データ図録参照)
戦後の首相の最多輩出県は群馬県の4名です。群馬県が戦前0名という状態から一気に増えたことは、維新政府の流れをくむ山口県選出の安倍首相には面白くないものでしょう。(戦後の山口県出身の首相は輩出数2位でいずれも、岸・佐藤・安倍という有力な政権を樹立しています。)
安倍首相に対抗していた自民党内の勢力であった、福田康夫・元首相、小渕優子・前経済産業大臣なども群馬県選出であり、安倍首相にとっては非常に面白くない県が群馬県ということになります。大河として長州人が群馬県令に就任する物語はまさに安倍首相は大いに溜飲を下げたことでしょう。
政権がNHKへの影響が強まることを見越したNHKの阿りから、吉田松陰の妹で群馬県令の嫁、という主人公が浮上してきたのかもしれませんが、あまりにも東日本民を愚弄にした舞台設定の大河ドラマだったと思います。
本作は北朝鮮ばりの長州礼賛プロパガンダ大河として、東日本の人々が現代まで続く長州支配の政治構造について問題意識を深めるきっかけにはなったのではないかと思います。
渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事
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