ビジネスで忘れてはいけないのは「素人の強み」 --- 内藤 忍

アゴラ

「初めての人のための資産運用ガイド」の出版元であるディスカヴァー・トゥエンティワンのクリスマスパーティに行ってきました。毎年、同じホテルの同じホールで盛大に行われる恒例行事です。

大手書店の偉い人や、その年に出版をした著者など200名近くが集まりますが、ユニークなのは出し物です。社員が歌や踊りを披露するだけではなく、著者までがステージに駆り出される趣向になっています。

著作の出版部数が10万部を超えると、ステージに立てるという「都市伝説」がありますが、今年は同社の干場社長とテレビでお馴染みのマーケティングライターの牛窪恵さんと3人で、ABBAのダンシング・クイーンを踊りました(写真)。

鏡張りの部屋のあるオフィスに何回も通い、練習したのですが、やはり本番は思った通りにはいかないものです。それでも、干場さんの手作りの衣装を着て気持ち良く踊ることができました。

ディスカヴァー・トゥエンティワンは創立30周年という老舗出版社ですが、既存の出版社には無いチャレンジ精神を持ち続けている稀有な会社です。その根底に流れているのは「素人の強み」だと思いました。

出版業界に新規参入した30年前は、業界のルールも知らず、だから既成概念に捉われないでビジネスを進めることができた。それが同社の急成長の原動力になったのです。本当に自分たちが良いと思うことを、愚直に続けることで読者の支持を広げていった歴史は、痛快な起業ストーリーです。パーティで紹介されたVTRを見ていて、16年前の自分を思い出しました。

1999年に創業したマネックス。当時の創業メンバーにも、株式の専門家は1人もいませんでした。社長は外資系金融機関で仕事をしていましたが、専門は債券やデリバティブで、株式取引は、マネックス証券の営業初日に行ったくらいの株オンチです。私も、銘柄選択よりもアセットアロケーションという考え方で、飛び込んでいったのです。

だからマネックスにも「素人の強み」がありました。業界の慣習や既成概念に縛られなかったからこそ、斬新なサービスや商品を提供することができます。当時のマネックスのビジネスの意思決定は「家族や友人にも自信を持ってすすめることができるか」が判断基準でした。業界慣習ではなく、真にお客様のメリットを追求してビジネスを展開していったからこそ、お客様の支持を集めることにつながったと思っています。

「業界の専門家」は、顧客のニーズよりも、その世界のルールに縛られる傾向があります。業界の中にいて、プロとしての知恵が身に付けば付くほど、発想が貧困になり、失敗を恐れて保守的になってしまうことで、企業としてのダイナミズムが失われていきます。

実は、来年3月に開催する「第3回世界の資産運用フェア」も、イベント運営の素人が協力して準備を進めています。毎回手作りで開催することで、苦労もありますが、既存のフェアにはない新しく斬新な価値を提供できたと思っています。

ダンスではさすがに「素人の強み」はありませんでしたが、ビジネスでこれからも忘れてはいけない大切なことを再認識できた素敵なパーティでした。


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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年12月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。