高校生の政治家像が地に堕ちている --- 清山 知憲

宮崎日日新聞社と宮崎産業経営大学が高校2年生を対象に合同で行った政治意識アンケートが衝撃的です。

これは県内の高校13校の協力により2,982人の高校2年生から回答を得たもので、私の知る限りでは高校生の政治意識を調査したものでは最大規模ではないかと思われます。

私は取材を受けたので事前に生データを拝見したのですが、アンケート結果から色んなことが解釈できるなと思ったのでここにまとめます。

最も印象的だった項目はこちら。

問26.あなたは、政治家に対するあこがれがありますか?

ある    1.4%

少しある  3.0%

あまりない 26.4%

全くない  68.0%

問27.あなたは、政治家になりたいと思いますか?

はい    1.5%

いいえ   69.3%

わからない 28.0%

「政治家へのあこがれ」については、「あまりない」と「全くない」を合わせて94.4%という突出した数字を叩き出しています。
そしてさすがに高校2年生にして政治家になりたい、と考える人が少ないのは理解できますが、実はこの27問目への回答の理由として書かれた自由記述がこの政治意識アンケートのメインコンテンツです。

アンケート結果をまとめた資料は全50ページですが、前半10ページがアンケートの概要と回答結果で、なんと残り40ページが問27についての自由記述欄です。

以下、宮日新聞の記事で紹介されていた代表的回答例

政治家になりたいと思いますか?そしてその理由は…?という問いに対して、

・何をしているのかよく分からない

・なりたいと思えるような政治家像を見せてくれる人はいないのにその逆はいっぱいいる

・政治家は言葉と行動が矛盾しているイメージしかない

・国会で寝ている人がいるから

・議会での論争を見ているとがっかりする

・政治と金の関係で問題になることが多く、「欲深い人」というイメージがある

・正直、何をやっていてそれが私たちにどんな影響があるかわからない

しかしこれらの例ですら、新聞社の配慮が伺えます。
以下、私の印象に残った回答。

・あのような人間になるのは嫌だ、◯ね。

・あんなドロドロした世界に入る気がしない。

・いいかげん・国民の声が届かない。

・お金だけもらっているイメージがある。

・せこいと思うから。税金どろぼう。(同様の意見多数)

・テレビで見ていて全くいい印象がない。好きじゃない。(12件同様の回答)

・マスコミにたたかれるから。基本的に悪者扱いされるから。

・安保法案採決時のような醜い大人たちと一緒に活動したくない。

・国とか重いもの背負うつもりはない(国、国会に関する類似回答多数)

・自分にはむいていない、無理だから。(同様の意見多数)

・頭が悪いから。

・面倒だから。

現役の政治家が読むには心を折らずにはいられない資料でした。。
なにもそこまで言わなくても…と思いつつ、これがリアルな高校生の意識なのだと冷静に受け止めています。しかし、文字で読むとなかなかショックですね。

さて、こうした結果を受け、どう解釈するのかがとても重要だと思います。
ちなみに宮日新聞では、「政治家へ失望にじむ」という大きな見出しでこの問26、27の結果を紹介されていました。

現役の政治家に対して高校生が失望している結果が、この回答であるという解釈です。
よって、政治家に責任があるのだ、と。

しかし、果たして政治を的確に理解した上で失望しているのでしょうか。

政治家の話を直接聞いたり、触れ合った経験がある生徒は圧倒的に少ないはずです。
アンケートによると、圧倒的多数の生徒がテレビとスマホから政治についての情報を得ていると回答しています。

道理で、国会の委員会が脳裏に浮かぶ自由記述欄となっているわけだ…
寝ている、醜い、金に汚い、頭が悪そう、などネガティブなイメージのほとんどはテレビを通して目に映る国会の混乱や政治家の不祥事です。

一方で、最も身近なはずの地方議会や首長は回答の中でほとんど登場してきません。

このように高校生にとって地に堕ちている政治家像とは、今後どうあるべきなのでしょうか。

・ここまでイメージが悪化したのも現職の政治家の責任だから、これで良い、これを受けて政治家は真摯に反省し、より良い政治を目指すべきだ!

と考えるのか、

・政治の重要性、政治家の役割についてもっとよく知ってもらい、バランスのとれた情報提供で政治家像の向上を図るべきだ!

と考えるのか。

新聞記事のなかでは、
「政治を良くする手段は選挙しかなく、立候補する人、投票する人を増やさないといえけない」という私のコメントが紹介されていましたが、政治の質を向上させることが目的であれば、政治家のイメージアップ(回復と言った方がいいかもしれませんが…)を図り、選挙への障壁を取り除き、選挙における競争を高めるしかないと思います。

現に先の宮崎県議会議員選挙では、14の選挙区のうちなんと10の選挙区が無投票、選挙になった選挙区でも軒並み候補者の数は減りました。
無投票という現象は現職の政治家の責任ではありません。政治家という就活市場(喩えです)において、新規参入者が激減している、よって競争性が担保できなくなってきていると理解すべきだと思います。

外部からの報道、批判によって表面的な制度や政治家の怠慢を改善させたとしても、それを作ったり容認してきた政治家の本質そのものは決して変わることはありません。

政治を良くする究極の手段は選挙であり、まずはその選挙へ立候補する人間を増やさないことには絶対に政治家の質も向上しません。そのことは近著でも繰り返し述べてきました。

最近は立候補者を増やすために議員報酬を上げようという動きもありますが、高校生の政治家に対するイメージを向上させるだけで、その目的は安上がりかつ生産的に達成することが可能なはずです。

働かない議員、せこい議員が目について頭に来るのも分かるのですが、どのようにすれば質の良い政治家を生み出すことができるか、メディアの皆さまも一緒に長期的な視点で冷静に考えていきたいと思います。


清山知憲 宮崎県議会議員(自由民主党、宮崎市選出)
1981年生まれ。東京大学医学部卒業後、米国での内科医インターン、宮崎大学医学部を経て2011年初当選。現在2期目。