たかが10大予想、されど10大予想

この時期はいわゆる10大予想花盛りです。当たる確率は6割程度とされるその中身もそれなりに考えられているものが多く一応、検証してみる価値はあろうかと思います。このブログのメインテーマである世界経済や国際関係、政治などをよくカバーしている二つの10大予想、ブラックストーン副会長のバイロン ウィーン氏とイアン ブレマー氏のユーラシアグループの予想をみてみましょう。

まず、ウィーン氏の10大予想はあまりにも有名ですが、当たる確率も比較的低い気がします。2015年予想もざっくり60点ぐらいでしょうか?この10大予想は当てるための予想というよりそんな見方もあるのだ、という切り口が面白いのだろうと思います。では2016年の氏の予想です。

1 アメリカ大統領選はヒラリー勝利。ちなみに共和党候補はクルーズ氏
2 アメリカ株式市場は世界情勢不安で現金志向が高まり下落へ 
3 FOMCの利上げは16年には1回のみで年後半には利下げ検討も
4 海外投資家もアメリカ投資持ち高を減少させ、ドル安でユーロは1.20ドルに
5 中国の成長率は5%以下へ、人民元は対ドルで7.0元に切り下げ
6 極右台頭でEUに再び崩壊の危機
7 原油は30ドル台低迷
8 ロシア、中国からの買の手が引き大都市高級不動産は急落  
9 アメリカ10年国債は2.5%以下(=安全志向が高まる)
10 世界経済はわずか2%成長に留まる。(IMFは3.6%成長を予想)

イアン ブレマー氏の2016年主要リスクは「同盟の空洞化」「閉ざされた欧州」「中国の影響力」「ISとテロ組織」「サウジアラビア」「IT関係者の政治力」「予想できない指導者」「ブラジル」「十分でない選挙」「トルコ」となっています。ブレマー氏が特定のエリアないし国家そのものにリスクを見て取っていることに注目すべきでしょう。また、この10大予想にロシアが入っていないことも特徴的だと思います。

この二つの著名予想を比べて共通項として言えるのはアメリカの孤立主義とそれに伴う世界への影響力の低下から世界がシュリンクしやすいという点でしょうか?また、欧州についてはブレマー氏がシェンゲン協定の危機を指摘し、ウィーン氏が極右台頭でEUの危機と指摘している共通点もあります。シェンゲン協定とはEU内なら国境検査なしに行き来できる協定ですが、欧州は既に一つの欧州を囲むそのボーダー管理が一元的でなく甘くなっているところがあることに懸念が出ています。具体的にはギリシャであります。

但し、ウィーン氏の予想に一部つじつまが合わないところがあります。それは氏の10大予想以外の起こりうる予想で日本について「アベノミクスが奏功、ドル円は130円に」とあります。これは10大予想でドル安ユーロ高を指摘しているのに対円だけドル高になるとみているようでこれはおかしいと思います。

いづれにせよ、あまり明るいニュースがなく保守的で安全が2016年のキーワードになりそうです。

ちなみに私がある雑誌に寄稿した今年の10大予想は権威も箔もありませんが、一応、さらっとご紹介します。(12月初旬に入稿したものです。)

「安倍政権、再び消費税問題でホットシートに」「為替と株価は市場に聞け」「米大統領選は史上最高のソープオペラ」「遠い世界平和」「あふれる石油と鉄鉱石」「日中韓は雪解けへ」「オリンピックどころではないブラジル」「カナダの不動産は今年も堅調」「若者の行動に変化」「テクノロジーの進歩に人間は退化」。

ちなみに記載内容の補足説明をするとカナダの不動産が堅調とみるのはカナダドル安でカナダ不動産が大バーゲンだからという意です。また日中韓の雪解けに関しては「慰安婦問題は政府レベルではなく市民レベル。これはそう簡単に解決しない」と記し、ブラジルについては「ルセフ大統領はオリンピック後に息切れ」としています。若者の行動変化とは「コンピューターの画面に飽きた若者がリアルの世界を見直す」というものです。

外れても悔しくないけど外したくもないこの予想、さて、どういう展開になるのでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 1月6日付より