東京港区のベイエリア、竹芝地区にデジタル・コンテンツの街を創る構想、CiP(Contents Innovation Program)。発足に当たっての宣言、その2。CiPが対象とする分野について。
2) デジタル・コンテンツ
マンガ、アニメ、ゲーム、そしてJ-Popに代表される日本のAV文化は、世界のポップカルチャーの一翼をなす。デジタル・コンテンツの集積拠点としては、この分野に注力することは当然だ。その制作、連携、発信の機能を充実させることは説明を要しない。
だが、2020年代のコンテンツはそれが主役であるとは限らない。
この分野は、過去5年で様変わりした。「スマート化」である。デバイスはTV、PC、ケータイからスマホやサイネージなどを含むマルチスクリーンとなった。パッケージからネットワークへ、さらにクラウドへと移行し、世界が単一市場となった。サービスはソーシャルメディアの成長が著しい。
コンテンツビジネスは、マルチウィンドウとクラウドでボーダレスなビジネスになり、アニメの海外配信を筆頭に、音楽のライブ展開、放送番組の輸出、そして食やファッションなどとの連携が注目を集めている。ソーシャルサービスに参加型コミュニティが形成されて、ソーシャルゲームが一大産業になり、みんながコンテンツを生み出している。
このマルチスクリーン、クラウド、ソーシャルという、メディアを構成するデバイス、ネットワーク、サービスの3要素が世界同時に塗り替わる波に日本は乗り遅れた。とはいえ、それを後追いするのではなく、もはや次のステージを目指さなければいけない。
次の幕は開きつつある。
マルチスクリーンを超える新しいデバイス環境を迎える。四角いスクリーンを超えたウェアラブル・コンピュータが一般化する。3Dプリンターにより平面ではなく立体がコンテンツになり、映像ではなくモノがコンテンツになる。M2M(Machine to Machine)、IoT(Internet of Things)が進み、クルマも家電もロボットも、すべてがつながって交信する。全てのモノにコンピュータが埋め込まれ、全てのモノがメディアになる。
クラウドネットワークの次世代のネットワークが構築される。5G通信網の上で、ビッグデータが共有され、そこに人工知能が組み込まれて、人を上回る仕事をネットワークがこなすようになる。街のどこにいても、自分の端末がオフの状態でも、情報が目の前を行き交うユビキタス環境となる。それはメディアが細密に埋め込まれたエコで安全な情報都市を設計することでもある。
サービスも急伸する。従来のコンテンツやソーシャルメディアだけではない。
Eコマースは小売全体の5%を占めるまでに成長してきたが、残り95%の領域にも広がり、生活・経済の中心となるのは間違いない。教育のかなりの部分がコンテンツ化し、医療の一部分がデジタル化される。2020年代には、年20兆円にのぼる国内教育コストの1/5程度はデジタル市場になるのではないか。医療コスト30兆円のどの程度がデジタル市場になるであろう。
行政も然り。行政事務をコンテンツ化するオープンデータが進んでいる。地方自治体の年間の予算総額は80兆円になる。そのどの程度がデジタル化するだろうか。巨額の可能性が潜在する。コミュニケーションとコミュニティが進化し、新しいサービスが生まれ続けるだろう。
CiPが展望するのは、そのような時代、そのような状況だ。そうした2020年代のデバイス、ネットワーク、サービスをプロデュースしたい。
(つづく)
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。