アップルの時代に変化?

岡本 裕明

6日の日経朝刊「アップル、最新iPhone 3割減産 1~3月、部品メーカーに打撃」の記事は日本の部品メーカーの株価に打撃を与え、そのニュースを受けた本家アップルの株価もさえない展開となっています。アップルの時代に変化が訪れるのでしょうか?

カナダの新聞に時々、iPhone5Sをパッケージにした格安の携帯会社の広告が目につくことがあります。どう見ても5Sの大処分市のような様相です。実は私の事務所の電話やネット、会社払いの携帯を法人の包括契約に変えることにしたのですが、その際、電話会社がそっと差し出したのが5S。タダで上げるので使ってくれと。私はiPhone6があるから要らないよ、といったらこれは定価がカナダで600ドルぐらいするからネットオークションで売ればいいお金になるよ、と。

ちなみに調べてみると当地では5Sはネットで300ドルぐらい、日本でも2万から3万円程度で取引されているようです。つまり、実質定価の半額の価値しかない型の古い5Sなのです。一方、日経の記事は6/6Sの売れ行きが芳しくないということですが、カナダには5Sの在庫がまだ相当あってそれを使ったかなり無茶な営業攻勢が行われていることなのでしょうか?

アップルの販売が以前ほどの勢いがないのではないか、ということは北米の株式のアナリストの間ではそこそこ以前から指摘されていたことで同社の株も15年7月に132ドルだったものが今や100ドル割れ寸前となっています。仮にこの水準を割れば14年10月以来の水準となります。

2015年のダウ平均は7年ぶりに年間上昇できず、下落となりました。その長いアメリカ経済復活の象徴的銘柄がアップルであり、多くの機関投資家やファンドは「持たざるリスク」などと称して同社株を買い上がってきたわけです。同社は「アップル信者」が支えてきたように顧客の囲い込みも非常に上手でアップルストアには今でも人だかりが絶えません。これはショッピングモールの七不思議とも言える現象であります。

新興国に於いても販売シェアについては必ず3番手あたりの上位につけておりアンドロイド系の他社が激しいつばぜり合いをしていてもアップルはいつも不動の地位を築いているケースが多いかと思います。

ではなぜ、アップルが今になって売り上げが落ちてきているのか、ですが、6/6Sは機能面で5Sから大幅な進歩がなかった、とされています。というより今やどのスマホでもほとんどの動作、ソフト、機能は差をつけられなくなっています。

以前、パソコンに於いてアップルとウィンドウズの戦いがあった際、アップルを使っている人を羨ましく思ったことがありました。それはデザインが格好良いこと、そしてデザイナーがこぞってアップルを使っていたからだと思います。あたかもデザイナーズブランドのアクセサリーを持ち歩く感覚でアップル信者が生まれていったわけです。

ただ、それらのコンピューターガジェットがコモディティ化することで性能の差別化を図りにくくなり、価格的魅力に劣るアップルが必ずしも信者を常に維持できるとは限らなくなるでしょう。例えが良くないのですがユニクロはベーシックで基本性能が良いから皆、躊躇なく買います。これが一定のブランドイメージを持つアウターとなると変わってくるでしょう。「お前のスマホ、すごいな」とはもう、誰も言わない時代となればスマホは極端な話、ユニクロベーシックの下着と同じ感覚になってしまいます。

アップルがその輝きを増すには圧倒的な差別化を図りつづけなくてはいけないでしょう。有機ELモデルもその一つなのだろうと思いますが、今や独占的差別化が非常に図りにくくなった時代にスマホだけをいくらモデルチェンジしても限界がありそうです。圧倒的な付加価値、それがわかれば私も苦労しないのですが、を生み出すアップルのブラッドを維持してもらいたいものです。

さもなければ安売り競争に巻き込まれ、「アップルよ、おまえもか?」と指摘されてしまいかねません。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 1月7日付より