国会議員が育休を取得する、という話題がまさかここまで盛り上がるとは誰も思っていなかったんじゃないでしょうか。賛否両論があるのは世論でもそうですし、アゴラ内でも同じように賛否両論の意見が聞かれます。
ですが、話題としては「国会議員は育休をとる権利があるのか?育休をとってもよいか?」という話がメインになっているようですので、あえて視点を変えて見たいと思います。今回の育休を批判する日本の空気について、考えてみたいと思います。
「保守的な子育ての考え方が少子化の要因」という仮説
以前、朝まで生テレビをぼーっと見ていた時に白河桃子さんが「子育てに保守的な考え方の国ほど少子化になる」という話をしていました。「男は仕事、女は家庭」といった家父長制的な考え方が少子化の国に共通しているというのです。確かに日本を見てみると、今回の育休批判で自民党内から「育休で評判を落とす」という声が出ていますから、まだまだ保守的な子育て感は根強く残っていると言えるでしょう。
朝生で白河さんが例に出されていた国がドイツです。ドイツの出生率は2009年のデータですが1.36で、2009年の日本が1.37だったことと比べても、よく似た数値になっています。ただ日本とドイツは少子化は似ているのですが、少子化への対策はだいぶ違っています。日本に比べてドイツはかなり少子化対策に予算を割き、力を入れているのです。
こちらの「少子化対策、奏功せず – ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト」によると、ドイツでは児童手当に加えて課税優遇措置も含めて、子供一人あたり14万6000ユーロものお金を出しているそうです。日本円にして1500万円ほどになりますから、かなりの予算を割いているのがわかります。
ただここまでの予算を割いていながら、少子化の解消に向かわないというのです。その理由の一つとして考えられるのが、子育てに対する保守的な態度ではないか?と白河さんはおっしゃっていました。例えば子供のいる家庭で両親どちらかにだけ収入がある場合に税金が優遇されるという税制がドイツでは続いているそうですが、これも昔ながらの育児への考え方が続いている証拠と言えるかもしれません。
もちろんこういった「男は仕事、女は家庭」といった昔ながらの考え方が少子化の要因という仮説以外に、保育施設が少ないために少子化になっているという有力な意見もあります。ただ、保育施設が少ないというのも裏を返せば「女性が家で子育てをすればいいじゃないか」という空気感や世間の考え方が原因とも言えるかもしれません。
仕事優先、育児優先ではなく両立の道模索を
日本の場合は今回の国会議員が育休を取ることへの批判が非常に強く、まだまだ育児というものが仕事や社会の下に置かれているということがよくわかります。逆に少子化対策の成功例として上げられるフランスは仕事の時間は短いですし、婚外子が認められるなど結婚の形も自由であり、かつ女性も8割が子育てをしながら労働していることで、出生率を上げる事に成功しました(内閣府研究会報告書等)。
対するドイツ・日本は「男性は仕事、女性は家庭」という空気がまだまだ強く、子育てと労働を両立するというのが女性であっても難しい状況です。加えて男性においては、イクメンという言葉を流行らせてでも、男性に育児参加をさせなければならないほど、仕事に重点が置かれています。それは自民党幹部が「育休をとることで評判を下げる」と言及したことでもわかります。
日本では少子化が進んでいて、少子化の対策をしなければならないわけですが、今の育児を下に見る空気では、少子化が解消されることは難しいでしょう。確かに国会議員の仕事は重要ではありますが、育児よりも国会議員の仕事が上、と多くの人が考えている限りは少子化は解消されないのではないでしょうか。
別に「仕事のほうがくだらない」「育児こそ至高」と言っているわけではありません。どちらがいい悪いではなく、両立の道を模索すべきではないでしょうか。育児もでき、かつ国会議員の仕事もできる、そのために立法をすべきではないのでしょうか。もちろん我々一般人であっても、育児も仕事も両立するという世間の空気が、少子化対策のためにも求められているように思いますがいかがでしょうか。
松本孝行(@outroad)